“廃墟マニア”に大人気の「摩耶観光ホテル」で進んでいた知られざる解体・墓地造成計画、危機を救ったのは…

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「もうマヤカンを壊すつもりはありません」

 三宮氏は「今でも廃墟の魅力というのはよくわかっていません。でも、もうマヤカンを壊すつもりはありません。会社の所有物ですが、公共のものだと考えています」と語る。

 あの時、前畑氏と三宮氏が言葉を交わさなければ、今ごろマヤカンはどうなっていたか。三宮氏が、縁ができた人を大切に思わない人物だったら……。

 日本では廃墟化したものも含めて、数多くの産業遺産が取り壊されてきた。産業遺産が存在できているのは決して当たり前のことではない。その裏には残そうと汗を流した人たちと、その思いを汲んで困難を受け入れる覚悟ができた人たちがいた。

 マヤカンは持ち主と守りたい人に恵まれた、幸運な廃墟でもあった。

華川富士也(かがわ・ふじや)
ライター、構成作家、フォトグラファー。1970年生まれ。長く勤めた新聞社を退社し1年間子育てに専念。2022年からフリーで活動。アイドル、洋楽、邦楽、建築、旅、町ネタ、昭和ネタなどを得意とする。過去にはシリーズ累計200万部以上売れた大ヒット書籍に立ち上げから関わりライターも務めた。

デイリー新潮編集部

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