“廃墟マニア”に大人気の「摩耶観光ホテル」で進んでいた知られざる解体・墓地造成計画、危機を救ったのは…
前畑氏のアドバイスで不法侵入激減
打ち解けてくると、三宮氏は前畑氏に「どうすれば不法侵入を防げるのか?」と相談した。前畑氏は元々廃墟マニアだっただけに、マニアが嫌がるものもわかっている。
「入り口にわかるように機械警備システムを入れるのはどうでしょう、と提案しました。常に監視されていると分かれば近づく人は減るでしょうし、もうひとつ、見学ツアーを提案しました。不法侵入までするハードなマニアは、誰でも入れるとなると興醒めするんです。不法侵入をしたくないマニアは、ちゃんとツアーに参加してくれます」(前畑氏)
警備システムに加えて、心理的にも来ようと思わなくなる理由を作れば、不法侵入は確実に減ると考えた。
三宮氏によれば「設置後、不法侵入が凄く減って、警察、消防からの呼び出しもなくなったんです」と実際に大きな効果があったという。
この一件から三宮氏は前畑氏を信頼するようになった。前畑氏と話すうちに、マヤカンに対する考えも変わっていった。解体・墓地化計画も取りやめた。
三宮氏によれば「マヤカン関連で前畑さんが何かやろうと言ったら、僕は“いいよ”としか言いません。前畑さんを信じてますから」という。2人の間に鉄の信頼関係ができていった。
マヤカンを登録有形文化財に!
やがてマヤカンを登録有形文化財にしようという動きが起こる。言い出したのは街づくり活動を続けてきた、NPO法人ひょうごヘリテージ機構H2O神戸の理事で、一級建築士の松原永季氏だ。
2017年には松原氏、前畑氏、三宮氏が中心となって、文化財登録のための調査費用などをクラウドファンディングで募集した。これが予想を上回る700万円以上を集め、マヤカンへの注目度の高さが示された。
そして2021年、マヤカンは無事に登録有形文化財に指定される。
マヤカンの人気は廃墟マニア以外にもしっかり広がっており、地元の「摩耶山再生の会」が主催し、マヤカンに近づける「摩耶山・マヤ遺跡ガイドウォーク」は、募集開始からすぐに満席になる。軍艦島ほどの規模ではないものの、マヤカンもしっかり人気観光地になっているのだ。
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