無印良品、“営業利益5割減”の衝撃… ライバル台頭で迫られるブランドイメージ転換

ビジネス 企業・業界

  • ブックマーク

“ブランド神話”は限界に

 価格とは別の切り口で「日用品や消耗品への注力」と「地域密着」を体現しようとしているのが、昨年11月17日に東京・板橋区にオープンした「無印良品板橋南町22」だ。関東最大の路面店を謳う大型店舗ながら、最寄りの駅から徒歩10分かかるという、ちょっと不便な立地にある。

 ただしそれをあえて狙っているフシもあり、店舗にはスーパーマーケットのマルエツとドラッグストアのどらっぐぱぱすも併設。駅や商業地から離れた住宅地に出店することで〈お客様の生活に近い存在として役に立ちたい〉という狙いがある(店舗紹介より)。もっとも全226台の巨大な駐車場も備えているので、必ずしも近隣の地域客だけを対象としたわけでもなさそうだ。

 四階建ての店舗には食品から衣服、家具など幅広いカテゴリーの商品が揃っている。「500円無印」では扱いが少なかった衣服や家具に関しては「2023年8月期 第1四半期決算」でも〈国内での過剰は、売上が厳しいファニチャー、ファブリックス〉と触れられているが、

「低価格帯の日用品ではスタンダードプロダクツというライバルがいましたが、衣服ジャンルでもかねてよりのユニクロというライバルがいたところへ、ワークマンや近頃では中国のネット通販のSHEINも現れた。家具ではノンブランドながら無印とテイストが似たネットショップが拡充してきたほか、近年ニトリやイケアというライバルも現れました。これらの店は都市部にも店舗を出店しはじめていますから、無印良品と比較される機会も増えてきています」(渡辺氏)

 とはいえ、デザインが似ているとされるスタンダードプロダクツはさておき、ニトリやイケアの商品は“ちょっと高いけれど質が良い”無印良品とは方向性が異なり、同じ土俵に上がらないのでは、という意見もあるかもしれない。

「逆にいえば、そこに価値を見出し無印は特別だと思える顧客だけが今の無印良品を支えているともいえます。1980年に西友のPB(プライベートブランド)からスタートした無印良品は、そうしたブランドイメージに支えられて今日まで続いてきたわけです。いってしまえば、ブランドの付加価値ゆえの値段を設定して利益を得るビジネスモデルでした。しかし、自ら低価格帯の商品にシフトしていることからも分かるとおり、今はそうした“ブランド神話”は限界にきています。中国や東南アジアでは今も売上が好調なところを見ると、ひょっとするとこれから伸びていく国とは相性が良いのかもしれませんが、少なくとも今後の日本で戦っていくのは茨の道でしょうね」

 従来のブランドイメージという点では、「500円無印」そして“コンビニで手軽に買える”ローソンでの展開は、従来のイメージからすれば意外な戦略かもしれない。過去には無印良品がファミリーマートと提携していたことがあったが、無印良品は三菱商事と資本提携を行いローソンは三菱傘下ということもあり、ローソンと商品を共同開発する方針など、ファミマ時代とは力の入れ方がちがう。

 ローソン導入によって「化粧品の(※ローソン店舗での)売上高が導入前と比較し平均で約5割増加」(22年12月30日付「食品新聞」)という成果がある一方で、それを伝える記事のコメント欄には〈ショッピングモールで買うから、価値あるのに〉〈無印のあの空間で買うからいいんだよ〉と従来のファンと思しき声が寄せられているのは象徴的だ。

 現在の良品計画の低迷は、こうしたブランドの転換期ゆえともいえるだろうか。

次ページ:渡辺氏が考える無印良品の武器は…

前へ 1 2 3 4 次へ

[3/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。