人気ユーチューバーの広告収入が激減 専門家は「今年は例外なく全員が“解雇”状態に」
打倒TikTok
「YouTubeは、“打倒TikTok”、“打倒Netflix、Amazon Prime”が急務となりました。既に対抗策は固まっており、ユーチューバーの広告収入が減少したことと関係があると考えられます。つまり『ライバルの3社から視聴者を取り戻すような動画を作ってくれれば改めて厚遇するし、そうでなければ辞めてもらう』というメッセージを発したのです」(同・井上氏)
YouTubeが“打倒TikTok”の切り札としているのは、「YouTubeショート」だ。最長で60秒という短い動画を重視する方針だという。
ユーチュラが発表する「2023年1月 チャンネル登録者ランキング」を見ると、1位は「じゅんや」(2010万人)、2位は「さがわ」(1610万人)、3位は「キッズライン」(1270万人)となっている。「聞いたこともない名前だ」という人も多いだろう。
「1位の『じゅんや』と2位の『さがわ』の動画はYouTubeとTikTokの両方に投稿されています。スマホで見やすい縦画面で、再生時間が短いものが目立ちます。内容もケチャップを自分の顔にかけるとか、缶をゴムで自分の額にぶつけるといった他愛もない“一発芸”。言葉の壁を超えやすい動画なので、海外のファンも多いようです。動画の説明は英文で書かれています。手の込んだ動画編集を必要としないので、それほど制作費もかかっていません」(前出の記者)
問題動画の排除
日本でユーチューバーが注目された理由の一つとして、「地上波のバラエティ番組を凌駕する可能性」が取り沙汰されてきたことが挙げられる。
「“オワコン”のテレビ局にYouTubeが引導を渡す、という図式でした。実際、優れたディレクターやカメラマン、編集マンがスタッフとして参加し、テレビ局では扱えないテーマでも果敢に挑戦するユーチューバーが人気を集めてきました。制作費もかかるが、リターンも大きい。だからこそ地上波はピンチと言われていたのですが、もはやYouTube側は、そうした動画を必要としていないようなのです」(同・記者)
従来のユーチューバーが投稿してきた動画には、民放キー局も真っ青になるようなクオリティのものもあったが、ひどいものも少なくなかった。
陰謀論や露骨な人種差別を主張する問題動画も目立った。YouTube側が投稿された動画の全てをチェックすることは不可能で、文字通りの玉石混交だった。
ところが「YouTubeショート」を柱の一つにすると、問題動画を排除できる可能性が高まるという。
「短い動画で陰謀論や差別的な内容を伝えることは至難の業です。『YouTubeショート』が盛り上がると、歌やダンスといった動画でも一発芸的なものが主流になり、問題動画は自動的に隅へ追いやられる可能性があります。さらに、YouTubeによるチェックも、数十分の動画を視聴するのは大変ですが、短い動画なら簡単です」(前出の井上氏)
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