浅草・伝法院通り「立ち退き裁判」に無罪請負人・弘中弁護士が参戦 本人が語った勝算は?

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「面白いなと思った」

「確かに引き受けたのは十和田のお蕎麦を食べたことが発端です(笑)。電気ブランとか面白いお酒を出す店で飲むこともあるけど、浅草にはいろんな場所があった方が楽しいから」

 そう語るのは、弘中弁護士ご本人である。

「昔から、どんなに忙しくても必ず現場に足を運ぶことにしていますが、実際に伝法院通りの人たちと会ったのは1年ほど前ですね。下町の人って気取らずサッパリしているし、ズケズケ言うけど人は悪くないから好きなんですよ。その時に会ったお土産屋さんから、私の名前を木彫りにした札をもらいましてね。今でも携帯のストラップとして付けていますよ」

 そもそもクライアントが有名人であろうとなかろうと、きちんとした紹介者がいない事案は引き受けないことを信条にしているそうだ。

「今回は女将さんから話を聞き面白いなと思いました。そう思う基準は自分の中にいくつかあって、まず好奇心が満たされるか。問題が複雑で解きほぐしてみたくなるか。社会的な話題があるかどうかですね」

「面白い裁判をやっているんです」

 これまで手掛けてきた事件もそうだったとして、こう続ける。

「それこそ昔だとロス疑惑事件もそうですよね。あれだけ週刊誌やテレビで騒がれて話題性はすごくあった。現場もロサンゼルスだし、自分も何が本当のことなのかと思ったわけです。いろいろな証拠や人間関係が絡み合い、何が問題なのか、どの問題を解けば事態が解決するのかという複雑さがあった。浅草も伝法院通りが全部取っ払われたらどうなっちゃうの?とみんな関心を持ちますよね」

 で、肝心の立ち退き訴訟における勝算を聞くと、

「明々白々の勝訴を目指しています。争点はいろいろとあって解決にむけて判決が下される段階にはありませんが、手応えは感じています。伝法院通りが区の土地だとしても、すでに浅草の一角を成す観光地として長い歴史をもっていますし、それを前提にして行政の側も商店も協力関係を築いてきた過去がある。そうした浅草の特殊性が問題になっていて面白い。そういう面白い裁判をやっているんです」

 喜寿を迎えてもなお少年のような無邪気さをのぞかせる守護神のご加護は、果たして下町にも轟くのだろうか。

週刊新潮 2023年1月19日号掲載

ワイド特集「寒の入りに泣く人笑う人」より

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