「中井貴一」特別インタビュー 素晴らしい後輩たちとのセッション
全ては本人の実力
元々女優さんとしてのポテンシャルの高い方でしたからね。どんな物に対しても自分を180度変えたいという時には、相当な覚悟が必要となります。とても怖いことですが、それを凌駕する夢があれば行動に移せる。小池さんは大きな夢を持っていらっしゃったからこそ実践できたんですよ。なによりもその行動力が素晴らしい。
だからこそ全て自分の実力なんです。誰かが育てる、とかじゃないんですよね、人間って。誰かと話すことによって、今まで自分では見えなかった方向に気付き、その方向に行くか行かないか。それが正しかったかどうかの結果は後からついてくる。全ては自分自身の力だと僕は常に思っています。
「俺、役者に向いてないな」と思うことも
〈現在、佐々木蔵之介とダブル主演する人気コメディー映画シリーズの第3弾「嘘八百 なにわ夢の陣」が公開中だ。常に第一線を走り続けているやに見える中井の俳優人生だが、意外にも「引退」の二文字が頭に浮かぶこともあると言う。〉
今度の「嘘八百」はシリーズ第3作目になるのですが、よく昔から「何事も3回」と言いますよね。家も3回建てなければ満足なものにならないとか、三度目の正直とか。そういう意味で今作は3回目でやっと体に役がなじんできたように思います。
でも仕事に対して慣れた部分は全くないと思います。僕たちの仕事は、壁にぶつかることの方が圧倒的に多いんです。自分の体を楽器にし、役柄によっていろいろな音色を出していかなければならないですからね。体調、コンディションによっては自分の出したい音が全く出ないこともある。
そんな時はもう俺、役者に向いてないな……って、本当に何度も辞めて「引退」しようと思うことがあります。その壁を乗り越える力がないと続けられない商売だと思います。これだけ壁にぶち当たっても、「いや今度は良い音が出る、出せるんじゃないか」と心を奮い立たせていくその積み重ねで、ここまでやってきたところもあるような気がします。
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