一夜のあやまちの後、突然会社に現れた浮気相手… 年下女性に“略奪”され「新生活がつらい」と嘆く50歳男性の苦悩

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改めてミドリさんと話してみると…

 彼はミドリさんに連絡しようと思いながら、なかなか連絡できずにいた。どうしたらいいかわからないのだ。そうこうしているうちにひっきりなしにミドリさんから連絡が来るようになった。会社にも現れて「あなたの上司と話がしたい」と言い出した。

「逃げてばかりいてはいけない。とにかく彼女と向き合ってきちんと話をしてきなさいと妻に言われました。そこで、連絡して会ったんです。落ち着いて話してみると、ミドリはそれなりにちゃんとした子でした。年齢は当時29歳。実は僕の勤務先と取引のある会社に勤めていて、僕の姿を何度か見かけていたそうです。部署も違うので直接話したことはなかったと。そして二回り近く違うのに、僕に片思いをしていたと言うんです。信じられませんでした。こんなおっさんを好きになるなんて。ただ、片思いのつらさは、僕自身も妻の路子に対して経験がある。自分の当時を思い出しながら、なんとなくせつなくなりました。僕は、彼女が小さいころに亡くなったお父さんに似ているんだそうです」

 片思いに陥ったミドリさんは、彼と接触できる機会を狙った。だが職場で話しかけるわけにもいかない。一度だけ、亮輔さんを夜の繁華街で見かけたことがある。亮輔さんは例のバーにひとりで入っていった。あの店に行けば会えるのかもしれないと思いながら、ひとりでは入りづらかった。あの日は意を決して行ってみたら、亮輔さんが入ってきたのだという。やはり縁があるのだと彼女は思った。そこからのことはずっと考えていたことを実行しただけ。お酒に睡眠薬などは入れていないと彼女は言い張った。

「離婚して結婚してください。お子さんたちはもう大きいんでしょう。だったら今度は私の子の父親として生きてくださいと言われて。言ってることがめちゃくちゃじゃないですかとつぶやくと、『そうですよね』って泣き出した。そもそもよく知らない男女が一夜の過ちをおかしたという話であって、そこで結婚云々ということになるかなあと思わず本音を洩らしてしまいました」

 自分としては離婚するつもりはない。できれば子どもは産まないでほしい。きみの気持ちはありがたいけど添うことはできない。事務的な言い方で申し訳ないけど、中絶費用もお詫びももちろん出すから考えてほしいと彼は言うしかなかった。

「ところが帰宅してみると、妻に離婚届をつきつけられました。その日、またミドリが妻の会社に来たそうです。子どもを産みたい、離婚してほしいと泣かれたと。『彼女、29歳なんですって。私があなたと結婚した年齢よ。あの子は本気で結婚したいんだと思う。私はあなたと一緒にいて幸せだった。今度はこの幸せを誰かに譲ってもいいのかもしれないと考えちゃったの』と。なんだそれ、という話ですよ。みんなおかしいだろ、と。妻は『あなたに裏切られるなんて思ってもいなかったから、ショックでおかしくなってるのは確か。信じられないくらい、あなたのことがどうでもよくなってしまったの』と。騙されたような感じで、浮気ともいえない浮気なのに、どうしてこうなるんだと、もうわけがわからなかった」

家庭、そして職場も失って

 とにかくひとりになって考えてみてと言い残し、週末、妻は出て行った。当時、子どもたちも同居していたのだが、小さいころから家事をさせていたため、みんな一通りのことはできる。ただ、長女はその後すぐに、妻と一緒に住むと家を出ていった。

「長男も、『何やってるんだよ、おとうさんは』と言って軽蔑のまなざしでしたね。息子と一緒に住んではいたけど、時間帯もすれ違いだし、あちらがあまり話したがらなかった」

 その後の展開は早かった。妻からは離婚届が送られてきた。ミドリさんは妊娠20週目に入り、あと2週間で中絶可能期間を超える。そこへミドリさんの継父がやってきた。

「ミドリは継父とは関係がよくないから家を出たと言っていました。確かに脅すような言い方をされました。まあ、実父であったらもっと腹を立てていたかもしれません。彼は僕と同い年でした。ミドリのおかあさんより年下で……。『こうなったら結婚してもらうしかないんですよ』と彼は言いました。どんどんそういう方向に追いつめられていった気がします」

 彼が女性問題で苦悩していることは、いつしか会社にも知られていた。信頼して相談した先輩が洩らしたらしい。こうなったらもう行き着く先は離婚しかなかった。さらに会社にもいづらくなって、ついに辞めた。退職金は思ったほど出ず、妻への慰謝料や家のローンの残りなどを考えると経済的にも苦しかった。

「うちに来ていいから、とミドリの母親に言われて臨月に入ったミドリと一緒に、遠方の彼女の実家にたどりつきました。子どもが産まれる前にとせかされて婚姻届も出しました。新しい職場も継父の縁故でなんとか見つかった。ところがその後、結局、子どもは死産で……」

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