「ブラッシュアップライフ」「女神の教室」にヒットの予感 バカリズムの巧みな脚本のポイントは
日常生活をリアルに描く
そこから3人はカラオケ店へ。店の受付をしていたのは福ちゃんこと福田俊介(染谷将太[30])である。やはり3人の元同級生だ。会うのは成人式当日以来で13年ぶりだった。
3人は成人式当日もこの店に来た。福田も一緒。33歳になっている3人はカラオケ店の個室に入ると、成人式当日を振り返り始める。
「福ちゃんがさぁ、なんだっけ。『粉雪』(レミオロメン、2005年)かなんか歌って、みんな『むちゃウマー』ってなったよね」(美穂)
「『粉雪』だったっけ?」(麻美)
「違ったっけ?」(美穂)
「『粉雪』系のそっち系だと思うんだよね」(夏希)
やっぱり会話に意味は1ミリもない。だからこそ真に迫っていた。「そっち系」という言葉はドラマではあまり聞かないが、これも真実味があった。現実の人間が日常で使う言葉もいい加減。いちいち正しい日本語など考えない。
3人は成人式当日のカラオケで、音楽界志望だった福田の背中を押したことを思い出す。「絶対やれるよ!」と暗に音楽界での成功を保証した。夏希は福田からサインまでもらった。
けれど「やれるよ」という言葉に根拠はゼロ。単純に「歌ウマ」と思っただけ。ノリで言ったのだろう。夏希はサインをすぐになくした。無責任な応援だったことを象徴している。
その後、福田は音楽業界に進むが、夢破れた。結婚した元同級生・しーちゃんとも2年前に別れた。このため、3人は福田の背中を押してしまったことを、ほんの少しだけ後悔した。
「うちらにも多少、責任あるよね」(夏希)
「そーだねー。あんとき止めておけば良かったね」(麻美)
風刺が効いていた。現実の人間も若い時は友人らの夢を無責任に応援しがち。先々のことなんて、まず考えない。ちなみに麻美と夏希は言葉とは裏腹に、責任なんて感じてない様子だった。
この後、麻美は死んだ。死後の世界の案内人(バカリズム)から、来世ではグアテマラ南東部のオオアリクイに生まれ変わることになると伝えられる。生前の行いにおいて徳が不足していたからだ。カラオケ店の会話だけでも納得できた。
麻美は落胆したものの、案内人から現世をやり直すことなら出来ると告げられる。同じ麻美として赤ん坊から再スタートし、徳を増やすと、来世でも人間になれる可能性が高まるという。
この話に麻美は飛びつき、やり直し人生が始まる。知恵や記憶は大人のままというのがミソだ。
保育園まで進んだ麻美は保育士・池脇洋子(中田クルミ[31])と同級生・玲奈ちゃんのパパ(勢登健雄[41 ])の不倫を阻んだ。体は小さいが、知恵は大人なので、それも可能だった。
麻美は玲奈ちゃんパパのポケベルに文字メッセージを送ったのである。
「フリン シタラ バラス」
玲奈ちゃんパパは不倫を断念。麻美は徳が増やせたと安堵する。けれど、これで徳が増えるのだろうか? なんだか玲奈ちゃんパパを脅しただけにも見えた。
物事をあまり深く考えない麻美の性格も前世のままなのが、今後のポイントになるだろう。
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