【追悼 ジェフ・ベック】インタビュー中もギターを手放さず…ステージでは白いストラト1本で通した理由

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インタビュー中もギターを弾いていた

 1度だけジェフにインタビューしたことがある。2010年の来日時。ジェフは65歳だった。緊張した。レジェンドだし、気難しいと伝えられていたからだ。若いころは、暴力的とも言われた。

 1967年公開の映画「欲望」にヤードバーズの演奏シーンがある。ジェフとペイジの在籍時で「ストロール・オン」を演奏する。劇中ベックは狂ったようにギターを振り回し、破壊する。

 1970年代のジェフ・ベック・グループも、その次に組んだベック・ボガード・アンド・アピスも、メンバー同士の確執で解散したとされている。

 しかし、キャリアを重ねた60代のジェフ・ベックは穏やかな紳士だった。1つ1つの質問に対して、丁寧に回答してくれる。低めの声で話し、ときおりふと笑顔を見せる。短い時間だったが、誠実に話をしてくれた。

 ジェフは過去の栄光についてはほとんどふり返らなかった。彼の興味は現在と未来のこと。

 毎日ギターを弾き続けていると言い、その理由を聞くと「自分のやるべき音楽を続けているだけ」と話した。

 さらにこんなことを語ってくれた。

「自分をハードにプッシュしながらの継続はものすごく大切だ。どんな分野でもね」

「やるべきことを少しでも休んだり、怠惰になったりすると、それまでに行ってきたこと、築いたものは、すべてゼロにもどってしまう」

 そうくり返した。
 ギターを弾く以外の時間は、自分の畑で野菜をつくっているそうだ。都市部から離れた土地で質の高い野菜を作り、食べ、コンディションを維持し、質の高い音楽を生む生活を送っていた。

 ジェフのギターは本人の肉声に近い。かつてミック・ジャガーやロッド・スチュワートと共演したときは、シンガーが2人いるかのように、ジェフのギターが歌っていた。

「僕のギターがシンガーの声のように聴こえるとしたら、その理由は、自分のギターを身体の一部と感じているからだろう。僕はいつも、声の代わりにギターを鳴らしている。脳で考えイメージしたものを、指を通じてギターの音にしている」

 筆者とのインタビューの場でも、ジェフはギターをつま弾きながら話していた。アンプにはつながず、生音でむせび泣くようなイントロを弾いた。
 それは代表曲の一つ、「哀しみの恋人たち」だった。

(神舘和典/ライター)

デイリー新潮編集部

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