販売価格「350万円」! 緊急承認されたアルツハイマー治療薬は“夢の新薬”か? 専門家が「費用対効果」を真面目に検証した

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副作用の脳内出血で死亡事例も

 レカネマブは軽症(早期)のアルツハイマー病患者を対象としたものだが、エーザイは最終段階の臨床試験で得られたデータから「27%の抑制効果」が認められたと発表した。

「同臨床試験では約1800人を対象に18か月間、2週に1回の頻度でレカネマブを投与したグループと、偽薬を投与したグループに分けて検証。その結果、1年半後の重症度がレカネマブのグループで1.21ポイント、偽薬では1.66ポイント悪化した。これが“27%の抑制効果に相当”するとされましたが、両数値の差異の臨床的意義については米国内の専門家の間でも意見が分かれています」(岡田氏)

 効果を否定するものではないものの、「明確にどれほどの抑制効果があると考えればいいのか」について評価が揺れているという。同様に議論の対象となっているのが副作用の問題だ。

「レカネマブは脳内の血管に蓄積されたタンパク質(アミロイドβ)に結合するため、血管の壁などを傷つける可能性が以前から指摘されていました。それに起因する同薬の副作用として脳内出血17%、脳の腫れが13%発生し、いずれも偽薬を投与したグループより高い数値となりました。脳内出血では死亡事例も報告されています」(岡田氏)

「年350万円」の販売価格

 副作用に対する評価検証が続くなか、普及の最大のネックとなるのはむしろ「高額な価格」にあるとの声も少なくない。

 レカネマブの米国での販売価格は1人あたり年間2万6500ドル(約350万円)に設定。日本では仮に承認されたとしても米国より低く抑えられる見込みだが、「年間100万円単位」(前出・厚労省担当記者)になると見られている。

「かなり高額であるにもかかわらず、効果について議論の余地があり、副作用の問題も軽視できない。費用対効果の面から考えると、現段階では慎重な検討を要する新薬と考えます」(岡田氏)

 エーザイにレカネマブの安全性などについて訊ねると、

「引き続き、データの検証を行い(中略)得られた科学的知見を医学学会においてサイエンティフィックコミュニティ(科学界)に向けて発表してまいります」(同)

 と回答した。新薬の評価が定まるのはこれからだ。

デイリー新潮編集部

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