中田翔、年俸倍増のカゲに「原査定」 FA惨敗に通底する巨人の“病巣”とは

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活躍でも消えない中田の“暴力事件”

「原監督は中田のトレードが理解を得られなかったことに忸怩たる思いを抱いていただろう。それが昨季の中田は復活につながるような活躍を見せた。原監督にしてみれば、自分の判断が正しかったとアピールしたい。今季の昇給や複数年契約で、中田獲得の正当性が強調されることになった」(前出のNPB元監督)

 昨季の中田の4番抜てき自体がそうだった。

「岡本は高橋(由伸)前監督が我慢して使い、4番に育てた選手。不調のチームへのカンフル剤だったとはいえ、原監督自身が“聖域”と表現していたほどの重責である巨人の4番に、いとも簡単に中田を代役として立てた。この采配で、自身が獲得した中田は不可欠な戦力であることを示したように見えた」(同)

 それでも昨季、巨人はBクラスに沈んだ。中田の成績は上がってもチームが浮上しないままだった。

 中田は今回、3年契約を結んだことで、巨人でユニホームを脱ぐ可能性が高まった。だが、後ろ盾である原監督は来季までの契約で、チーム成績次第では契約期間を全うできるかどうかさえ不透明だ。

「今後、中田が活躍したとしても暴力事件のケジメがついていないことには変わりない。中田のように暴力事件を起こしていない中村(紀洋)でも、中日では育成契約というどん底から再スタートしたことで、日本シリーズMVPにまでなった時に復活をたたえられた。中田は成績や年俸がたとえ日本ハム時代を上回ったり、原監督に重用されたりしたとしても、無条件に評価はされないだろうし、されてはいけないと思う」(同)

楽天・石井一久監督はGMを退任したが……

 それにしても指揮官が選手の年俸にまで影響力を持つなら、現場に“恐怖政治”がはびこりかねない。

「全権監督は監督としては夢の肩書だが、チームを機能させるには、やはり無理がある。例えばチーム強化では、目先の勝利に固執する監督と中長期的な視点が必要なフロントの考え方は相容れないことが多い。成績を評価する側、評価される側の線引きが曖昧にもなる。フロント業と監督業の両立は今の野球に馴染まない」(元NPB球団社長)

 楽天ではこのオフに石井一久監督が兼務していたゼネラルマネジャーを退任し、今季は采配に専念することになった。球界を見渡しても、全権監督は原監督ただ一人となった。

 この元球団社長は、強すぎる監督の権限の弊害として、他球団の選手が巨人を敬遠するようになったとも分析する。今オフのフリーエージェント(FA)市場で、巨人に移籍した選手は皆無だった。いずれも獲得を調査していた3選手、西武からFA宣言した森友哉捕手はオリックスに移籍。阪神の西勇輝投手はFA宣言にさえ至らず、昨季まで米国でプレーしていた有原航平投手はソフトバンクにさらわれた。キャンプインが迫る中、原監督が球団の資金力を背景にして、におわせていた大型補強は不発に終わろうとしている。

「FA選手は巨人に移籍すれば原監督の強い支配下に置かれ、特に不振になると早々と見切られてしまう。(DeNAから巨人にFA移籍し)2年で引退した井納(翔一投手)などは最たる例。今ではソフトバンクやオリックスなど、FA交渉で巨人に引けを取らない条件を提示する球団もある。巨人は原監督が全権を掌握し続ける限り、FA選手からの不人気は続くのではないか」(同)

 原監督が全権監督の限界を悟り、その権限を返上することがチーム再建の最短距離のようだ。

デイリー新潮編集部

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