再燃する「地下鉄は核シェルター」説… 3つの「鉄道都市伝説」の真相は

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一丸となって大隈の名誉回復

 そうした背景もあり、筆者は佐賀の人たちから鉄道にまつわる話をたっぷりと聞かせてもらえることを期待した。

 しかし、県庁・市役所・財界人すべての人たちが、大隈が狭軌を採用して後悔したというエピソードに触れると不機嫌な表情になった。あからさまに激怒する関係者もいた。これらの経験から、佐賀人にとって大隈は不可侵の存在だと感じさせられた。

 そして、佐賀県は「大隈が狭軌を採用した事実はなく、歴史的な証拠がない風聞だ」として、全県が一丸となって大隈の名誉回復に取り組む。

 その一端が垣間見えたのが、2021年11月から2022年1月にかけて佐賀県立佐賀城本丸歴史館で開催された記念特別展“陸蒸気(おかじょうき)を海に通せ!”だった。

 同展では、狭軌採用の経緯について「来日前、モレルはセイロン島でホレイショ・ネルソン・レイと会談。この会談で、すでに2人は日本の鉄道を狭軌で建設することを決めていた。大隈は後年に責任者として『狭軌採用は間違いだった』と振り返ったに過ぎない」と定説の否定を試みている。

 レイは、来日後に大隈から厚い信頼を寄せられるイギリスの外交官で、それゆえに大隈はレイを信用し任せただけと言いたいのだろう。しかし、これだけでは大隈が狭軌採用を主導したとの説を完全に覆したとは言い難い。

 それでも、佐賀県の関係者たちは「最近、その説は否定されている」と異口同音に大隈狭軌採用主導説を頑なに否定する。

 奇しくも、鉄道開業150年を迎えた2022年は大隈没後100年という節目とも重なっていた。佐賀県は「大隈重信100年アカデミア」という記念事業を推進して大隈の偉業を全国に広めることに躍起になっていた。

 佐賀県は大隈重信100年アカデミアの一環として、東京都港区に所在する高輪ゲートウェイ駅付近から出土した高輪築堤の石垣の一部を引き取った。それらは、佐賀県内にある大隈ゆかりの地に展示される。当然ながら「大隈重信100年アカデミア」では、鉄道開業150年も大隈の偉業のひとつであると大々的に宣伝している。2022年に東京・日比谷公園で開催された鉄道フェスティバルでも佐賀県はブースを出展し、「大隈重信100年アカデミア」の周知に余念がなかった。

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