実はあいまいな「Z世代」の定義 カズレーザーはかつて興味深い指摘をしていた
カズレーザーは「Z世代はダサイ言葉」
芸能界屈指の論客であるカズレーザー(38)は昨年9月、自身のYouTubeで興味深い発言をした。
「Z世代とかY世代って、上の人が勝手に作った枠組みなんですよ。本当に今の価値観にアップデートしたいんだったら、こういう言葉は使わないほうがいいですよ、古臭く見られます」(カズレーザー)
世間に迎合しないカズレーザーらしい発言だ。さらに、こうも言った。
「もしZ世代に当てはまっているんだったら、絶対にZ世代なんてダサい言葉は使わないでください。昭和だと思われます。そこだけは気を付けて欲しいですね」(同・カズレーザー)
知らない誰かがつくった空虚な言葉に踊らされないように呼び掛けたのである。
過去にも生まれた年代で世代を括ろうとする動きはあった。数年おきに「――世代」という言葉が生まれた。
だが、多くが消えていった。カズレーザーの言う通り「勝手に作った枠組み」であり、実態を表してなかったからだろう。その言葉を使う必然性もなかったためだ。
一例は「団塊の世代」(1947~1949年に生まれた第1次ベビーブーマーの約810万人)、「バブル世代」(おおよそ1965~1969年生まれ)、「ポパイ世代/JJ世代」(おおよそ1952~1960年生まれ)、「新人類世代」(おおよそ1961~1965年生まれ)。
まだある。「いちご世代」(団塊ジュニア、おおよそ1971~1974年生まれ)、「ロスジェネ世代」(おおよそ197~1984年生まれ)、「ゆとり世代」(1988~2004年生まれ)、「さとり世代」(おおよそ1987~2004年生まれ)。
今も使われて、しかも多くの人に意味が通じるのは「団塊の世代」「バブル世代」「ゆとり世代」くらいではないか。Z世代も消えてゆく可能性は捨てきれない。
10代に昔の常識を見せて、驚く様子を番組化したテレ朝「ニンチド調査ショー」(木曜午後7時)はZ世代という言葉を使わない。真っ先に使いそうなのに。その理由を増田哲英プロデューサーはこう説明した。
「『Z世代』という言葉は『今の若者』を指す用語で、世代の分断をあおっている感じもする」(2022年9月18日付朝日新聞朝刊)
1つの見識に違いない。増田プロデューサーはこうも語った。
「その代わりに、誰もが(自分の)昔を振り返れる『10代、20代』という言葉を大切にしています。番組のこだわりは、時代と世代を『分断』するのではなく『交差』させること」(同)
確かに「10代」「20代」、あるいは「20歳前後」程度で十分であるはず。
もっとも、目新しさを追う民放のバラエティやドラマがZ世代という言葉を使うのは理解できる。「新語・流行語大賞」を獲った言葉はしばらく番組タイトルやサブタイトルに使われやすい。
Z世代という言葉が好きなNHK「おはよう日本」
解せないのは日本語を研究し、守る立場にある「NHK放送文化研究所」まで擁するNHKのニュースが、新語や造語、流行語が好きで、乱発することである。
例えば昨年9月21日放送のニュース「おはよう日本」のコーナー「おはbiz」は「Z世代の経営者たち」という特集を組んだ。「Z世代の間で今、自ら事業を起こして社会を変えていこうとする人が増えています」と説明した。
ここでクビを捻る。いつの時代も社会を変えようとして起業を試みる若者は少なくない。「増えている」というのはいつの時代の若者と比較してのことなのだろう。
故・江副浩正氏がリクルートを創業した時、まだ東大に在学中だった。サッカーW杯の無料中継で通信の常識を変えたAbemaの藤田晋社長(49)が、ネット広告業のサイバーエージェントを立ち上げたのは25歳の時である。社会を変えようとして若者が起業するのは今に始まったことではない。
「おはよう日本」は単にZ世代という言葉が使いたかったに過ぎず、さらに別の世代と無理に差別化したかったのではないか。
登場した若い経営者たちは全員20代前半。分かりやすい放送が求められているNHKなのだから、わざわざZ世代なんて使わず、「20代前半の若者の間で――」という説明で良かったはずだ。
2014年5月12日放送で「いまや若者の一大勢力? マイルドヤンキー」という大特集を組み、物議を醸したのも「おはよう日本」だった。今、マイルドヤンキーという言葉を使う人はどれくらいいるだろう?
公共放送が新しい言葉を世に広めるからには、その言葉が誰によって、どんな目的でつくられたかをつぶさに調べ、その言葉の行く末まで推し量るべきだ。
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