「20年間で一番食卓の雰囲気が良かった」 日本代表専属シェフが明かすW杯大躍進の舞台裏

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食卓の雰囲気は「20年で一番良かった」

 西シェフの料理には特徴がある。作り置きでなく選手の目の前で調理し、常に出来立てを出す「ライブキッチン」方式を取ること。また、試合に向けてメインディッシュの順番が決まっていることもそうだ。試合の3日前にはハンバーグ、2日前には銀鱈の西京焼き、前日にはウナギの蒲焼きというのがルーティンである。

「どれも食が進みそうでしょう? グリコーゲンローディングといって、試合前に炭水化物をたくさん摂取しておくと、肝臓や骨格筋に蓄積され、パフォーマンス時にエネルギーに変わるのです。一方、試合後は平均的に2~3キロは体重が落ちる。それを戻すためにゲームの後はどれだけ疲れ切っていても食べられるカレーを用意しました。今回、医療チームの方から、試合後に選手の体重がきれいに戻っていると言われ、とてもうれしかったですね」

 20年近く代表に同行しているだけに、食卓での様子でチームの雰囲気は手に取るようにわかるという。

「今回はこれまでで一番良かったんじゃないかな。長友さんが場を盛り上げ、川島(永嗣)さんが目配りをして若い子に寄り添う感じで」

 指揮官たる森保一監督は、

「全員が見える席に着いていました。食事を取りながらずっと選手たちのことを考えている様子でした」

スペインを食ってやれ

 勝敗に一喜一憂することもなかったそうで、グループステージの初戦、金星を挙げたドイツ戦の後も、

「皆さん落ち着いたものでした。もともと勝てると思っていて、冷静に勝利を味わっている感じ。ゴールを決めた堂安(律)選手に“やったね”と言うと、“これからもっと活躍するんで”とクールに言っていましたよ」

 敗れた次戦・コスタリカ戦の後も淡々としていたという。

「その翌日のスペイン対ドイツ戦は食堂でみんなで観戦したんです。引き分けで私はがっかりしたんですが、選手の皆さんは“一番わかりやすい形だ。次で勝てばいい”と言っていて……」

 決勝トーナメント進出をかけた戦いの前夜は、

「スペインの名物、ガスパチョをメニューに入れました。敵を食ってやれという願いを込めて。勝った後は、選手の皆さんとグータッチしましたが、こみ上げてくるものがありましたね」

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