勝新太郎が生前語った「唯一、かなわないと思った俳優」、市川雷蔵が涙を流しながら語った身の上話… 俳優・三夏紳が明かす「大映」秘話

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勝に初めて褒められた日

 公開されてから1週間ぐらいして、東京の撮影所に来ていた勝さんとお会いしました。

「映画観たよ。よかったなあ。あの死んでいくシーン。あれだよ。お前の目を観ていて、本当の恐怖感が伝わってきたよ」

 あの勝さんに初めて褒められたんです。一生の宝物ですよ。

 その3年後、雷蔵さんががんのため37歳で亡くなりました。69年7月17日でした。暑い日で、はっきり覚えています。あれから半世紀以上過ぎてしまいました。

 勝さんがやはりがんに命を奪われたのも、ハッパにまつわる会話を交わした半年後。65歳でしたね。いま思えば、私のもとにお別れのあいさつに来てくださったのかもしれません。

 あの楽しい場面ももう、四半世紀も前のこと。

 月日の経つのは早いもんだと、よく言ったものです。

三夏 紳(みなつしん)
俳優。1941年生まれ。広島県出身。61年、15期ニューフェイスとして大映入社。映画「陸軍中野学校」やドラマ「ザ・ガードマン」などに出演。現在は劇団「三松座」の座長として活動している。

週刊新潮 2022年12月22日号掲載

特別読物「創立80周年 『大映』ニューフェイスが見た『勝新太郎』と『市川雷蔵』の素顔」より

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