小椋佳が最愛の妻と別居し“週末婚”を選んだ理由 タバコは1日2箱、毎日コーラを飲む「不健康人生観」

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タバコのおかげで…

 高校時代に、国語の先生から妙に目を掛けられましてね。まずは大正期を代表する思想家、阿部次郎の『三太郎の日記』を題材にして、一行ずつ丹念に読む訓練を受けました。それから、プラトンやデカルトなどを読みふけるようになり、すっかり言葉の沼に呑み込まれてしまったのです。

 正義とは何か、真実とは何か、神とは何か――さまざまな問いに対して答えを見出さなければならない。そうした強迫観念にとらわれてしまったんです。自分の吐く言葉がうそくさく感じられるようになり、次第に口数が少なくなって、ついにはノイローゼに陥ってしまいました。ある種の哲学病とでも呼ぶべきものでしょうか。

 そんな悶々とした時期がしばらく続いたある日、あれは大学に入ってしばらく経った頃のこと、上野にあった実家で、覚えたてのタバコをくゆらせていた時でした。目の前で紫煙がゆらゆらと揺蕩(たゆた)っている。その様を見ていて、ハッと気が付いたんです。

 煙の道筋は、誰にも予想することはできない。次の瞬間どこに行くのか、どのように揺れるのか、いくら考えても答えは出ようもない。同じように、私は人間じゃ答えられない問いに取りつかれ、頭を悩ませていたんじゃなかろうかと。

 つまり、タバコのおかげで私は言葉の底なし沼から脱することができた。その時の恩返しのつもりで、毎日40本も律儀に吸い続けているわけです。これは決して、タバコ中毒者の言い訳じゃありませんからね。

大学に通わず旅費を工面

 コカ・コーラの味を覚えたのは、26歳の頃です。当時、今はなき日本勧業銀行に勤めていて、米国シカゴのノース・ウェスタン大学に社費で留学していました。

 ただ、キャンパスにはほとんど通わず、授業もふけてばかり。そのかわりに、99ドルで3カ月間バス乗り放題というチケットを買い、アメリカ中を旅した。どこに行くにしても、飲むのは決まってコカ・コーラでした。

 向こうでコカ・コーラをチビチビやりながら、頭を悩ませたのは、旅費をどうやって工面するかということ。当時、会社から支給されるのは1日10ドルでした。大学と寮の行き来だけなら十分なのですが、少し遠出をしようと思うと途端に心もとなくなる。

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