犬を飼うと、猫にはない「健康長寿」効果が! 目を合わせて遊ぶと「幸せホルモン」が3.5倍に…「介護」「心血管疾患死」リスクも低減

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高齢者が安心して犬を飼える仕組みを

 たしかにフレイルは、体力の低下とともに社会とのつながりの欠如によっても促進されてしまう。やはり、犬は「抗フレイル」に大きく貢献してくれるといえそうだ。しかし、課題がないわけではない。

 谷口氏が指摘する。

「近年、外出自粛に伴い自宅で過ごす時間が増加したことから動物飼育への関心が高まっています。一方で、終生飼養の観点から、高齢者の犬猫飼育には消極的な意見も少なくありません。動物飼育は健康長寿に大きな効果が期待できることから、高齢者が安心して動物を飼育し続けるための仕組みを官民が連携して構築することを期待しています」

 茂木教授が後を受ける。

「高齢者が犬を飼うのは体力的に大変かもしれません。しかし、高齢者には高齢者に合った犬がいます。例えば高齢犬を飼えば、若い犬に比べて運動量は少ないのでゆったりとした散歩ができる。その人、その世代に合った犬は必ず存在します」

 無論、ただ飼えばいいというわけではない。

「自分にもしものことが起きた場合に犬をどうするかはしっかりと考えておかなければいけませんが、犬を飼うことで生活に張りができるのは間違いありません。例えば、今、増えている高齢者のおひとりさまにとって、犬は健康長寿を支えてくれる格好の存在といえるでしょう。70歳、80歳になって妻や夫を失い、新たな伴侶を探すのはなかなか難しい。そうであれば、犬を飼うことで新たなパートナーとするほうが、現実的な『老後対策』といえるのではないでしょうか」(同)

目が合うと、犬も幸せホルモンを分泌

 偉大なる犬による健康長寿効果。だが、昨今は「愛玩動物批判」が高まり、ペットを飼うという行為そのものが問題視される傾向もあるが……。

「太古の昔から、番犬や猟犬として基本的に犬は人間とともにありました。野良犬といっても、もとをただせばほとんどは人間が飼っていた犬です」

 として、茂木教授がこう締めくくる。

「つまり、犬は常に人間の近くにいた。犬も人間を必要としてきたのです。先に紹介したオキシトシンに関する実験がそれを証明しています。なぜなら、見つめ合った結果、オキシトシン濃度が上がったのは人間だけではありませんでした。犬も上がった。犬も幸せホルモンを分泌していたのです。すなわち、犬も人間の近くにいることで幸福感を得ている。ですから、私に言わせれば、犬を飼うことに対する愛玩動物批判は……ナンセンスですね」

茂木一孝(もぎかずたか)
麻布大学獣医学部教授(伴侶動物学)。1972年生まれ。東京農工大学農学部獣医学科卒業、東京大学大学院農学生命科学研究科修了。横浜市立大学医学部助手などを経て、2020年より麻布大学獣医学部教授に就任。人間と、その伴侶としての動物について研究を続けている。

谷口 優(たにぐちゆう)
国立環境研究所主任研究員。1983年生まれ。秋田大学大学院医学系研究科修了。医学博士。2012年より東京都健康長寿医療センターで認知症予防に関する研究に従事。19年より国立環境研究所主任研究員に。『認知症の始まりは歩幅でわかる ちょこちょこ歩きは危険信号』等の著書がある。

週刊新潮 2022年12月22日号掲載

特別読物「人生100年時代の新『処方箋』 『猫』とは違う劇的『癒し』! 『犬』がもたらす『健康寿命』効果が科学的に立証された」より

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