犬を飼うと、猫にはない「健康長寿」効果が! 目を合わせて遊ぶと「幸せホルモン」が3.5倍に…「介護」「心血管疾患死」リスクも低減

ドクター新潮 ライフ

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「自立喪失」リスクが半減

「65歳以上の約6200人を対象に追跡調査を行ったところ、身体機能が衰えるフレイル(虚弱)が発生するリスクが、犬を飼った経験がない人と比べると、飼育している人で2割低減されることが分かりました。他方、猫の場合はリスクは変わらず、フレイルに対する予防効果は見られませんでした」

 こう解説するのは、国立環境研究所主任研究員の谷口優氏だ。この研究結果が科学誌に掲載されたのは2019年。そして22年、人と動物の関係を研究する谷口氏らは新たな研究成果を発表した。

「フレイルの関連要因である要介護状態や死亡への影響を調査しました。1万人以上の高齢者を対象に2年間の追跡調査を行った結果、犬の飼育による新たな効果が浮き彫りとなったのです」

 具体的には、次のような結果が出た。

「要介護と死亡をあわせて『自立喪失』と呼びますが、猫の飼育状況と自立喪失との間に明確な関連性はみられませんでした。ところが、犬を飼っている人とそうでない人を比べた場合、後者の自立喪失リスクを『1』とすると、前者の自立喪失リスクは『0.54』で、およそ半減。犬を飼っていることで自立喪失リスクが大きく低減されることが分かったのです」(同)

犬の散歩の効能

 猫にはない、犬による大きな健康長寿効果。死亡も含めたリスクが下がるというのだから、犬の飼育は「新たな健康長寿法」と言って差し支えなかろう。

「さらに今回の調査の特徴は、犬を飼っている人の中でも運動習慣があるか否かを調べたことです。その結果、犬を飼っていても運動習慣がない人の自立喪失リスクは0.85と大きな差はないものの、犬を飼っていて運動習慣がある人のリスクは0.44と大きく下がっていた。つまり犬の散歩などの運動が、健康長寿に貢献しているということです」(同)

 たかが犬の散歩、されど犬の散歩。恐るべし犬の散歩――。谷口氏らの研究結果を補強するように、海外でも次のような調査結果が存在する。

 例えば、スウェーデンの調査では、ひとり暮らしで犬を飼っている人は、ペットを飼っていない人と比べて心血管疾患で死亡するリスクが36%も低減。家族がいる世帯でも15%下がることが判明した。

 また、チェコの調査では、犬を飼っている人と、他のペットを飼っている人を比較した場合、犬を飼っている人のほうが身体活動や食事に関するスコアが最適である割合が高いことが分かっている。

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