冬ドラマ3選 前評判の高い井上真央、6年ぶりの草彅剛、ヤクザのような西島秀俊に注目
秋ドラマの余韻が残る中、冬ドラマが始まる。プライム帯(午後7時~同11時)には15本ある。興味をそそられる作品が揃っているが、その中から特に注目したい3本をご紹介したい。
TBS「100万回言えばよかった」(1月13日スタート、毎週金曜午後10時)
前評判がやたらと良い。各局のドラマ事情に通じている芸能プロ関係者に「冬ドラマはどれが一番面白そうか?」と尋ねるたび、決まってこのドラマの名前が挙がる。
主演は井上真央(35)。助演は佐藤健(33)と松山ケンイチ(37)で、物語はこの3人を中心に展開する。全員、押しも押されもせぬ主演級。キャスティングは魅力的に違いない。
プロデューサーを「恋はつづくよどこまでも」(2020年)や「俺の家の話」(2021年)の磯山晶氏(55)が務めることも大きい。日本のドラマ界を代表するプロデューサーの1人で、数々の名作や話題作を生んできた。
主人公は美容室店長の相馬悠依(井上)。中学時代に家庭の事情で里子に出され、そこで鳥野直木(佐藤)と出会う。
その後の2人は疎遠になっていたものの、大人になってから再会する。やがてお互いに相手を運命の人だと確信。直木はプロポーズを決心する。ここまではよくある物語だ。
その矢先、直木は不可解な「ある事件」に巻き込まれ、悠依の前から突如として姿を消す。悠依は懸命に探すが、直木が帰って来ることはなかった。死んでいたのだ。
もっとも、直木の魂はこの世に残っていた。直木は悠依の近くで懸命に語り掛ける。
「ありがとう、さようなら、愛している」(直木)。
だが、その声は悠依には届かない。直木は魂になっているからだ。最愛の人に惜別も感謝も言えずに消えてしまうのは哀しいはず。心残りだろう。
ところが、直木の魂が見えて、声も聞こえる男が現れた。直木が巻き込まれた事件の真相を追う刑事・魚住譲(松山)である。譲の実家は古刹。それが影響しているらしい――。
最愛の人が突然消えた現実を受け入れられない悠依。無念の思いを抱いたまま現世をさまよい続ける直木の魂。それが唯一見えてしまうことから、2人に寄り添うことになった譲。斬新な設定にほかならない。
秋ドラマは「エルピス-希望、あるいは災い-」(フジテレビ系)を始め、リアルな作品が目立ったが、この作品はファンタジーラブストーリーだ。
非リアルな作品のほうがテーマやメッセージを訴えやすいこともある。たとえばSFのほうが現実的な作品より命の尊さや戦いの空しさが伝わることは珍しくない。
この作品では愛している人に「さようなら」も言えないまま永遠の別れをする切なさやもどかしさが表されるようだ。
誰もが「生きているうちに自分の思いを100万回言っておけば良かった」と思わないとは限らない。コロナ禍だし、どんな人も前触れなく事故・事件に巻き込まれる怖れがあるからだ。ファンタジーとはいえ、身近に感じられる物語になりそう。
脚本はNHK「透明なゆりかご」(2018年)やテレビ東京「きのう何食べた?」(2019年)などを書いた安達奈緒子氏が書く。期待値の高さも納得である。
フジテレビ系(関西テレビ)「罠の戦争」(1月16日スタート、毎週月曜午後10時)
故・高倉健さんも認めた名優の草彅剛(48)にとって、6年ぶりの民放連続ドラマの主演作。否が応でも期待したくなる。物語も面白そうだ。
「銭の戦争」(2015年)「嘘の戦争」(2017年)に続く、草彅の戦争シリーズ第3弾。「銭」での草彅は金融マン、「嘘」では復讐のために詐欺師になった男に扮したが、今度は与党衆院議員の第1秘書・鷲津亨を演じる。
亨は20年前に自分を窮地から救ってくれた犬飼孝介議員(本田博太郎[71])の公設第1秘書。犬飼は恩人なので、滅私奉公してきた。その甲斐もあって、犬飼は内閣府特命大臣に任命される。
しかし、若き総理大臣・竜崎始(高橋克典[58])は犬飼を冷ややかに眺めていた。犬飼は土下座が武器である一方、女性蔑視の発言をする時代遅れの政治家だったためだ。総理以上の実力者・鶴巻憲一幹事長(岸部一徳[75])や野心家の厚生労働大臣・鴨井ゆう子(片平なぎさ[63])も同じ考えだった。
おまけに犬飼の息子で大臣秘書官の俊介(玉城裕規[37])は建設会社から不正なカネを受け取っているらしい。亨と旧知の仲である代議士・鷹野聡史(小澤征悦[48])からの情報だった。犬飼は時限爆弾を抱えているような政治家なのだ。
そんな中、犬飼の大臣就任祝いのパーティが行われた。政治資金集めが目的だ。亨が来客の対応に追われていると、妻の可南子(井川遥[46])から電話が入った。2人の息子・泰生(白鳥晴都[15])が歩道橋から落ち、瀕死の重傷だというから一大事だった。何者かに突き落とされたのだという。
それでも亨はパーティ会場を離れられなかった。犬飼の失言がまた炎上したからである。しょうもないオヤジなのだ。
さらに亨は泰生の事件について犬飼からとんでもない指示を受ける。事件のもみ消しだ。犬飼は事件にどう絡んでいるのか。もちろん、戦争シリーズだから、亨は我が子のために戦う。
亨は政治家たちに比べたら、ちっぽけな存在だが、弱い者には弱いなりの戦い方がある。亨がどんな罠を仕掛けるのかが見ものである。
脚本は「銭の戦争」「嘘の戦争」と同じ後藤法子氏(55)が書くというから期待できる。
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