浮気を正当化しようとした40歳夫の困惑…妻がついにブチ切れた彼の“特異気質”はモラハラなのか

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「それほど深刻な不倫をしたわけじゃありません。包容力のある妻なら笑って許してくれると思ったのに、どうしてこんなにこじれてしまったんだろう」

 男女問題を30年近く取材し、『不倫の恋で苦しむ男たち』などの著作があるライターの亀山早苗氏によれば、取材中にこんな愚痴をこぼす男性が稀にいるそうだ。

オリコンニュースが715名を対象に実施した調査では、3.8%が「パートナーの浮気を許せる」と答えている。この割合に男女の差はなく、浮気に寛大な人もいれば一度きりでも許せない人もいる。ただし亀山氏は“「こんなはずでは」と嘆く夫は、実は妻とそもそもの価値観が合わなかった。それだけは確か”とも指摘する。

 亀山氏が今回取材したのも、浮気をきっかけに妻に去られた男性だ。本人は原因がよく分かっていない様子だが、よくよく話を聞けば、根底には大きなすれ違いがあったことが分かる。価値観が合わないことに長い間気づかなかった、という典型的な例である。

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「浮気なら勝手にして気づかせないようにしてくれるならかまわない」という女性がいる一方で、「不倫するのは妻への人権侵害、殺人行為」とまで言う女性もいる。

 浮気や婚外恋愛をどう思うのか、自分たちはどういう夫婦でありたいのかを話し合っておくことも重要なのかもしれない。

「3ヶ月ほど前、妻が10歳のひとり娘を連れて家を出て行ったんです。いったい、何があったのかわからない。どうしたらいいかもわからない」

 そう言って頭を抱えるのは、深沢雄介さん(40歳・仮名=以下同)だ。その後、妻とはLINEで連絡をとりあっているが会えてはいない。

「妻は前から家出に備えてアパートを借りておいて、僕が3日ほど出張している間に引っ越しもすませたようです。新居は妻の実家近く。とはいえ自宅からも30分圏内です」

 娘は小学校から私立に通っているため、学校生活に影響はない。だが、雄介さんはこの上なくかわいがっていた娘と会えないことで憔悴しきっていた。

「妻とは運命の出会いだった。映画みたいでした。27歳のクリスマスイブ、その日デートの約束をしていた恋人に突然、フラれたんです。『他に好きな人ができた。ごめんね』というメール一本で。待ち合わせ場所に出かけていた僕は、そのまま夕方の街をほっつき歩いていた。カップルだらけで、心の中では彼女を罵倒していました」

 自棄になって歩いているとき、ひとりの女性とぶつかった。彼女はキャッと小さく悲鳴を上げて転倒してしまった。

「うわ、とんでもないことをしたと思って『ごめんなさい、大丈夫ですか』としゃがみこむと、立とうとした彼女、足首を捻挫したのか立てない。けっこうなヒールを履いていましたからくじいたみたいで。『病院に行きましょう』と言うと、『いいです。大丈夫です』と。でもふと彼女を見たら、泣いていたんですよ。大人が泣くほど痛いなら、とにかく病院へとすぐにタクシーをつかまえて近くの病院に連れて行ってもらいました」

 時間外だったので診てもらえたのは2時間もたってからだった。その間、彼女の足首は大きく腫れ上がっていた。彼は病院内のコンビニで氷やタオルを買って足首を冷やした。

「病院にいるのに診てももらえず、素人が氷で冷やすって、なんだか妙に皮肉な図式じゃないですか。思わずそんなことをつぶやくと、彼女がクスッと笑ったんです。そこで改めて自己紹介をして、謝罪もして。そうしたら彼女が『私もぼんやり歩いていたのがいけなかったんです』と。『ひょっとして誰かと待ち合わせしていたんじゃありませんか。連絡とれてますか』と聞いたら、『今日、2年つきあった彼にフラれたんです』って言うんですよ。『本当に? 僕もさっき3年つきあっていた彼女にフラれたところ』と盛り上がっちゃって。あんなことってあるんですね」

 幸い、骨折ではなく捻挫ですんだが、固定したほうがいいということで器具をつけて包帯をぐるぐる巻きにされた。

「送っていきますよ、と言いかけたんだけど、そういえば僕は都心のホテルのレストランを予約していたんです、恋人のために。『妙な気持ちではなく、せっかく知り合ったので痛みがひどくなければ食事でもしませんか。実は予約していて』と率直に言いました。彼女はおもしろがって、行きましょうと言ってくれた。フラれたばかりの男女が、クリスマスイブにホテルのレストランで食事って、今でも笑っちゃうような出会いでした」

 改めて自己紹介しあうと、彼女は夏音(かのん)さんといい、1歳年上だが、同じ誕生日、しかも同じ大学出身だということがわかった。学部は違うものの、同じキャンパス内を同じ時期に歩いていたはずだ。

「仕事のジャンルは違いますが、彼女の勤務先と僕の勤務先は取引があるとわかって、なんだか縁があるねえと。ホテルの部屋も予約していたので、実はその日、泊まっちゃったんです。もちろん、男女の関係はありませんでした。だけど夜景がきれいに見える部屋をずいぶん前から下調べして予約したから、キャンセルするのはもったいない。せめてあなただけでも泊まっていけばと彼女に言ったら、『イブにひとりで泊まるのはかっこ悪いわ』と。それもそうだよねと泊まったんですが、夜中までしゃべって、その後、彼女はベッドで少し眠り、僕はソファで寝落ちしました」

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