日本兵の遺骨収集を巡り東南アジアの大使を脅した右翼の男 その手口を元公安警察官が証言

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大使公邸に押しかける

 右翼の男は、世田谷にあった大使公邸にも押しかけた。

「彼は大使に『またお会いできましたね』と、不吉な笑みを浮かべていたそうです。大使もいよいよ困って、私に連絡してきたのです。そこで私は次に男が大使館に来る日を聞き出しました」

 当日、勝丸氏は所轄署の警官や公安第3課の右翼担当の捜査員を伴って大使館に出向いた。

「男は、我々を見て、大使館の職員に『なんだオマエ、警察が同席するなんて聞いてないぞ』と食ってかかりました。そこで私が『話すことがあるなら、俺たちの前で話せ』と言ってやりました。すると彼は、『今日は挨拶だけだ』と」

 勝丸氏は、大使を交えて男と雑談した。

「彼は『俺は日本のため、亡くなった兵隊さんのためにやっているんだ』と主張していました。大使館を出た後、男に『オマエ、ちょっと警察署に来いや』と言って任意で連行しました」

 男は抵抗せず、大人しく所轄署に行ったという。

「『オマエもう止めろ。これ以上やると、大使に被害届を出させてしょっぴくぞ』と言うと、黙って帰っていきました。彼を逮捕しなかったのは、大使が被害届を出さなかったからです」

 右翼の男を撃退したことが他の大使館にも知れ渡った。

「すると、『うちも右翼から脅かされている』という相談が3件ありました。話を聞くと、日本兵の遺骨収集を巡って脅されたというのです。手口もまったく同じ。同じ人物の仕業でしょう」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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