ウクライナ戦争 経済はじり貧でも、「ロシアの継戦能力は衰えていない」と言われる根拠
ロシアがウクライナに侵攻してから10ヶ月が経過した。
西側諸国からの厳しい制裁で一時は崩壊の可能性が指摘されたものの、ロシア経済はなんとか持ちこたえている。
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国際通貨基金(IMF)は2022年10月に改定した世界経済見通しで、各国の経済成長率を軒並み下方修正したが、ロシアの成長率については6.0%減から3.4%減に上方修正した。
経済の底割れを回避するためのロシアの努力が、これまでのところ功を奏している。
ロシア経済を支えているのは原油や天然ガスなどの輸出だ。
数量は減少したものの、価格が高騰したおかげで、今年1月から9月までのロシアの輸出額は前年に比べ約3割増加した。
輸出先も欧州から中国やインドなど新興国に大きくシフトした。
だが、原油価格は侵攻前の水準に戻っており、制裁を科されたロシア産原油は割引を余儀なくされている。2022年第3四半期のロシアの輸出額は前年に比べ5%増と大幅に鈍化しており、2023年の見通しもけっして明るくない。
約10万人のIT技術者が国外に流出
制裁下のロシア経済で舵取りをしているのはナビウリナ中央銀行総裁だ。
外貨引き出し抑制の資本規制などに踏み切ったことで、ウクライナに侵攻した当初に暴落したロシアのルーブルは今や対ドルで最も強い通貨の1つとなっている。
ロシア中央銀行は深刻なインフレを未然に防いできたが、再び「インフレリスクが増大している」と警戒し始めている。
人口減少が始まっているロシアの失業率は既に過去最低水準にある。このような状況下で30万人が戦争に動員されたことで深刻な労働力不足が生じることへの懸念だ。
人材の流出も深刻化している。
ロシア政府は12月20日「ウクライナ侵攻以降、約10万人のIT技術者が国外に流出した」と発表した。
専門家は「ロシア経済の技術レベルは2~3年後に大きく後退し、より割高で非効率な製品しかつくれなくなる」との危機感を露わにしている。
ロシア経済にとっての悩みの種は「ハイテク製品をいかに調達するか」だ。
西側企業の多くがロシアから撤退、輸出を停止した事態を受けて、ロシア政府はこれまで厳しく取り締まってきた正規の代理店を通さない「並行輸入」を強力に後押ししている。
「ロシアの2022年の並行輸入額は200億ドル(輸入総額の5%相当)に達する」との見通しが出ているほどだ。
注目すべきは、政府が公表した並行輸入リストの中にハイテク兵器の製造に不可欠な高性能の半導体が含まれていることだ。ロシアが迂回ルートを通じて半導体関連製品を調達している可能性は排除できない(12月3日付日本経済新聞)。
ロシア政府はインド政府に対して、自国の重要産業に必要な部品リストを送付したことが明らかになっているが、ロシアが製品輸入で最も頼りにしているのは中国だろう。
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