山下泰裕・全柔連会長が熱望した“進学校限定”の柔道大会 意外と厳しい「文武両道」の基準

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「スポーツ選手は勉強しない」と思われるのは嫌

 スポーツで有名になった私立高校が進学コースを設けたり、あるいはその逆で、進学校にスポーツコースがあることもある。こうした「二重構造」の高校の校長が「うちは文武両道の学校です」と平気で喝破していることがあるが、仮にも「文武両道」というからには、それが1人に備わっていなければ意味はない。

 世界選手権で3度優勝し、東京五輪代表候補だった女子重量クラスの強豪、朝比奈沙羅さん(26)は獨協医科大学医学部に進学した。彼女は渋谷教育学園渋谷高校(東京都)時代、「『スポーツ選手は勉強を全くしない馬鹿』みたいに思われるのは嫌だった。勉強もして医者になりたい」と語っていた。留学経験もない彼女がレベルの高い英語で国際大会の記者会見に臨む姿には、筆者もよく驚かされた。努力したのだろう。

 今大会で男女ともに活躍した浜松西は、バルセロナ五輪の銀メダリスト・溝口紀子さん(現・日本女子体育大学教授)を輩出した高校だ。溝口さんは中学時代、柔道推薦での高校進学を打診されたが、それを断り、勉強して浜松西高に進学した。ところが県の柔道連盟からは、柔道推薦を断ったことへの嫌がらせのように、不利な判定ばかりされたという。そこで彼女は「立ち技の判定は審判の裁量だが、寝技で押さえ込んでしまえば時計だけが審判」と考え、寝技に磨きをかけた。

 それが最終的に五輪銀メダルに繋がったのだから、何が幸いするかわからない。溝口さんは引退後、女子柔道フランス代表のコーチまで努め、さらに東京大学大学院に進んで研究を続け、「もの言う柔道家」としても知られる。

 彼女らはまさに「文武両道」の柔道家と言えるだろう。

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