ナミビアで逮捕された30代日本人フリーターがやった情けないこと 元公安警察官の証言

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 日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。一昨年、『警視庁公安部外事1課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、アフリカのナミビアで逮捕された30代の日本人について聞いた。

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 今回ご紹介するのは、勝丸氏が警視庁から外務省に出向し、アフリカ大陸の日本大使館に警備担当の外交官として赴任した時に起きた話である。

「ある日突然、ナミビアで日本人が留置されている警察署から連絡がありました。30代の日本人男性を逮捕したというのです」

 と語るのは、勝丸氏。

 アフリカの南西部に位置するナミビアは、人口は254万人(2020年)。映画「ミラクル・ワールド ブッシュマン」の舞台となったカラハリ砂漠の一部で、主演したニカウ氏の出身国でもある。

「親には言わないで」

「当時、ナミビアには日本大使館がなかったので、近隣の大使館に勤務していた私に連絡が入ったのです。そもそもナミビアに住む日本人は非常に少ない。JICA(独立行政法人国際協力機構)のナミビア事務所があって、そこの関係者がナミビア国内に10人くらい住んでいるだけだと思います」

 日本人男性は、現地の若い女性をホテルに連れ込んで、ワイセツな行為に及んだため逮捕された。

「現地警察に強制性交したのかと聞くと、そうではないと。動画を撮っていたというので、すぐにピンときました。アダルトビデオを撮影していたのです」

 男性は、領事官通報(海外で逮捕された時、その国の日本大使館の領事に面会を求める制度)を希望したため、勝丸氏に連絡が入ったのだ。

「ナミビアは貧しい国で、若い女性が路上で花などを売っています。彼女たちの1日の稼ぎは100円ほど。それでもランチと弟たちに菓子を買ってあげることができます。サラリーマンの平均月収が1万円ほどですから、100円は彼女たちにとって大金です。彼女たちは花を売るだけでなく、売春をする人もいました。1000円も出せば、ホテルに来るでしょうね」

 勝丸氏は、ナミビアで日本人が留置されている警察署に赴くと伝えた。

「ところが、『来る必要はない。ナミビアの国際空港に来て欲しい。日本人を国外追放する手続きは済んでいる』と言うのです。私は『裁判もせずに国外追放ですか』と聞くと、『裁判なんて面倒だ。男を空港で引き渡すので、そのまま帰国させて欲しい』と言われました」

 勝丸氏はナミビア空港で男性と対面。開口一番彼が言った言葉に呆れ返った。

「『親には言わないでください!』ですからね。私はさすがに頭に来て、『おまえ、何考えているんだ!』と言ってやりました。とんでもない奴です」

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