桑田佳祐は三波春夫になりきって抗議殺到、長渕剛はベルリンからタコ発言…NHK紅白「6つのトラブル」の真実
視聴率は下がる一方だが、国民的歌番組の座は死守している「NHK紅白歌合戦」。その第73回が大晦日の午後7時20分から同11時45分まで生放送される。長丁場なので毎回のように起こるのがトラブル。あらためて取材も行い、トラブルの真実を掘り起こす。
1982年(第33回)「桑田佳祐、紅白にパフォーマンスを導入、三波春夫さんになりきった事件」
2回目の出場で「チャコの海岸物語」を歌ったサザンオールスターズの桑田佳祐(66)が、最初から最後まで故・三波春夫さんになりきった。
三波さんと同じく白の着物姿で、顔は白塗り。歌い方まで三波さんに似せ、こぶしを効かせた。三波さんの常套句だった「(お客様は)神様です」も歌に盛り込んだ。当時、ツイッターがあったら、間違いなくトレンド入りしたはず。
もっとも、観客席は冷めていた。そのころの紅白の観客は中高年以上が中心。当時26歳だった桑田の遊び心が理解されなかった。
出場者によるパフォーマンスはこれが史上初だったので、違和感を抱いた視聴者もいた。NHKには「ふざけている」といった抗議電話が相次いだ。「NHKは堅くなくてはならない」というイメージが強い時代だった。
この件でNHKが桑田に謝罪文を要求し、桑田が応じなかったため、サザンがしばらく紅白から締め出されたという説まで流布されたが、これは紅白伝説。盛られた話である。事実、翌1983年(第34回)もサザンは紅白に出場し「東京シャッフル」を歌っている。
そもそもNHKは桑田のパフォーマンスを事前に知っていた。だから桑田が登場する際、白組司会者だった山川静夫アナウンサー(89)は「桑田佳祐さんが国民的な歌手の三波春夫に負けないよう、精一杯のお洒落です」と紹介している。
しかも桑田は「とにかく受信料を払いましょう!」とまで言ったから、謝罪を求められるどころか、感謝状を贈られても不思議ではないくらいだった。
日本の音楽界に大きな影響を与えた桑田は、紅白にパフォーマンスという新たな面白みを加えた。
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