「コロナの病原性はインフルエンザより弱い」「高齢者が街に帰ってこない」 老年医学の権威が語る第8波の過ごし方

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外出しないリスクの方が大きい

 しかし、最初に述べたように、この第8波においては、コロナの病原性は季節性インフルエンザ未満です。そんなもののために、いま輝けることを失ってしまってはいけません。

 そもそも高齢者は、若い人にくらべて高い健康リスクを背負っています。毎年、風邪をこじらせて1万~2万人が亡くなり、風呂場で亡くなる人が2万人程度、そのうち溺死の人が6千人程度いるといいます。でも、死ぬのが怖いから風呂に入らないという人がいるでしょうか? 同様に、コロナが怖いから外出しない、という考えは避けるべきです。繰り返しますが、外出せずに足腰が弱ってしまうリスクのほうが、よほど危険だからです。

 これまで連日、テレビなどで「高齢者が感染すると危険だ」と連呼されてきましたから、高齢者が外出したいと言っても、家族が反対するケースもあるでしょう。しかし、高齢者と同居している方も、第8波の実態を冷静に見極め、高齢者が閉じこもらないように心がけてほしいと思います。

交通事故が怖くて外出しない人はいない

 人間、生きているかぎり、さまざまなリスクに囲まれています。そして年を取れば、残念ながらリスクは増加します。交通事故で亡くなる人のおよそ6割が高齢者だという事実からも、そのことは伝わると思います。しかし、交通事故が怖いという理由で外出を控える人は、ほとんどいないのではないでしょうか。それなのに、新型コロナという特定のリスクだけを怖がって外出をしないというのは、冷静に考えれば、ほとんど意味がないことです。

 すでに少し述べたように、毎年、インフルエンザで約1万人、風邪で1万~2万人、肺炎で約10万人が亡くなります。現在は、そこに新型コロナが加わっただけの状況です。今年はコロナによる死者が3万人を超えたそうですが、いまは、たとえ交通事故で亡くなった人からコロナウイルスが検出されても、コロナ死にカウントされています。多くなって当然なのです。

 現在、日本には90歳以上が約200万人、要介護5の人が約60万人います。この人たちは、風邪のような普通の病気が、死につながりかねない予備軍です。一つのリスクだけを遠ざけたところで意味がない人たち、と言い換えることもできるでしょう。

 ですから、高齢者の方々は、発表される死亡者数などに惑わされず、リスクをある意味、運命と悟り、残りの人生を充実させてほしいと思います。

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