実写化で安心できる主演俳優は、鈴木亮平の“一択状態” 「当たり役を作らない」という特異なイメージ戦略
藤原竜也は反面教師? 「○○監督御用達」にならない戦略的な「クセのなさ」
ドラマや映画が冬の時代といわれるようになってから、俳優よりも制作側に注目が集まることも増えた。そしてヒットメーカーとして有名な監督や脚本家、プロデューサーには必ずひいきの俳優や芸人がいるものだ。例えば、福田雄一監督にとってのムロツヨシさん・佐藤二朗さん、三谷幸喜さんにとっての梶原善さんといったように。
その福田組の小栗旬さんが、「HK/変態仮面」に鈴木さんを推挙したその人ではあるのだが、だからといって鈴木さんは「福田監督御用達」にはならなかった。むしろ特定の色を避けたことが、実写化俳優としての唯一無二のポジションを築けた理由ではないだろうか。
原作ファンからも愛される俳優としては、藤原竜也さんもよく名前が挙がる。けれども彼は今や、誇張されたダミ声演技イメージが世間につきすぎてしまった。「カイジ」での当たり役のインパクトゆえだが、もったいない。それは木村拓哉さんの「ちょ待てよ」とか、福山雅治さんの「あんちゅあん」と同じ、「何をやっても〇〇」と呼ばれる弱点につながる。ちなみに福田組でのムロさんや二朗さんも、演技派なのにいつもコメディーリリーフだし、実写化はいつも高評価なのに、線が細くエキセントリックな役の多い本郷奏多さんも同じ葛藤を抱えているかもしれない。
一方鈴木さんは当たり役を作らない、あるいはあて書きするような制作者と組まないことで、どんな役柄にも対応できるという印象を与えることに成功している。なれ合いを求めない孤高のたたずまいも、制作側の事情に左右されない芯の強さとして、視聴者の信頼を勝ち得た理由のひとつではないだろうか。
次世代実写化俳優の雄・新田真剣佑との違い 火種くすぶる「ゴールデンカムイ」実写化には起用されるのか?
鈴木さんのクレバーさは、プライベートのコントロールの大事さを理解していることにもうかがえる。2011年に一般女性と結婚し子どももいるが、私生活についてほとんどオープンにしない。まして不倫報道も出たことがない。俳優業のために、徹底したイメージ管理を行っているのだろう。
少年マンガの実写化に強い俳優といえば、次世代ではハリウッド版「聖闘士星矢」に抜てきされた新田真剣佑さんも思い浮かぶ。彼もまた鍛え上げられた肉体の説得力を含め、ストイックな姿勢と実力に定評があるが、私生活での不穏なうわさも多かった。原作キャラを神聖視しているファンも多いだけに、俳優のスキャンダルは大きな反発を招くリスクがある。見た目や演技だけでなく、プライベートも含めて原作ファンを裏切らないという覚悟が問われていることを、理解している俳優はまだまだ少ないからこそ鈴木さんが重宝されるのだろう。
さて、今もっとも火種がくすぶっているのは「ゴールデンカムイ」のキャスティングだ。正直なんでもかんでも実写化するのは嫌だが、再現度の高さを追うなら全員鈴木亮平が演じればいいという声もちらほら聞かれる。金カムファンが固唾(かたず)をのんで見守る今、鈴木さんの名前は挙がるのか否か。いずれにせよ、ラッコ鍋と鈴木さんはよく似合うと思う。