秋ドラマ「ベスト3」 ファーストペンギンで奈緒から「バカなの?」と罵られ、再認識した俳優の実力

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(3)「クロサギ」(TBS)

 山下智久(37)が主演した同じTBSの2006年版は度外視した 。また、ドラマはシリアス作品のほうが評価が高くなりがちだが、エンタメ色が強い作品も同等に扱われるべきだと考えて評した。

 詐欺師を騙す詐欺師であるクロサギ・黒崎高志郎(平野紫耀[25])の暗躍が痛快だった。理屈抜きに楽しめた。ワルがもっと悪い奴を懲らしめる。現代劇版の「必殺仕置人」のようなものだろう。

 後半に進むに連れて、尻上がりに面白くなった。復讐劇のファクターが大きくなったからだ。復讐は現実では許されないものの、観る側を惹き付ける。

 自分の生活を犠牲にしてまで故人の仇を取るという筋書きが日本人のDNAに合っているのだろう。僅か約150年前 まで仇討ちは正しい行いとされ、今も「忠臣蔵」に涙する人がいるのだから。松本清張「霧の旗」なども繰り返し映像化されている。

 黒崎に扮した平野の演技が光った。哀しみを背負ったワルという役柄もハマっていた。甘いマスクだが、生まれ持ったワイルドな雰囲気があり、故・松田優作さんらハードボイルド俳優の正当な継承者にも成り得るはず。ちょっと嗄れた声もいい。来年5月にKing&Princeを脱退し、ジャニーズ事務所も退所するが、また違う作品で観たい。

 助演に名優を贅沢に使ったことで作品が締まり、見応えが増した。詐欺師界のフィクサー・桂木に扮した三浦友和(70)はうまい人である上、誰もが認める人格者。その人柄の良さが役にも表れた。桂木から黒崎への深遠なやさしさは演技だけで出すのは難しい。ウソがバレる。

 エリート銀行員の皮を被った詐欺師・宝条兼人を演じた佐々木蔵之介(54)も出色だった。主演級の人だけあって、善玉役も悪玉役も観る側の期待を裏切らない。

 黒崎のその後に含みを持たせた余韻のあるエンディングも洒落ていた。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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