今年も年末年始にあえて「カレーライス」を出すテレビ東京 若者に媚びない戦略の原点は

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年始番組にも平常運転臭

 次に年始番組。やっぱり平常運転臭が強い。

※元日(日)「THEカラオケ★バトル またまたそれやっちゃう?あの大ヒット曲 ご本人は何点出せるのか?新春SP(4時間)」(午後5時55分)

※1月2日(月)「出川哲朗の充電させてもらえませんか?新春4時間SP」(同)

※同3日(火)「家、ついて行ってイイですか?お正月4時間スペシャル」(同)

「充電させてもらえませんか?」で出川哲朗(58)のパートナーを務めるのは上川隆也(57)。初登場だ。これにはスペシャル感がある。

 と、思ったら、上川は6日に放送されるテレ東の新春ドラマスペシャル「ホリデイ~江戸の休日~」(午後7時半)に出演する。番宣か……。いや、他局でもよくある。無粋なことは言うまい。

 他局の年始番組に晴れ着姿の女性たちがにぎにぎしく登場する中、「家、ついて行ってイイですか?」を4時間放送するのも攻めている。華やかさとは対象的に、一般市民のしみじみとした哀歓を映し出すからだ。

何をやっても嫌われない理由

 テレ東が年末年始番組のゴーイングマイウェイ色を強めたのは1981年。社名が東京12チャンネルからテレビ東京に変わった年である。

 当時のカリスマ社長、故・中川順氏の大号令によって、1月2日に12時間ぶっ通しで放送する「新春ワイド時代劇」が編成された。第1作は故・萬屋錦之介さん主演の「それからの武蔵」。この作品は平均世帯視聴率13.7%を記録した。大成功を収めた。

 1クール(3カ月)の連続ドラマ全話とほぼ同じ長さの作品を、たった1日で放送したのだから、イケイケだった。このころから攻めていたのである。「新春ワイド時代劇」は放送時間を短縮しつつ、2016年まで続いた。

 テレ東はどんな年末年始体制を敷いても視聴者から許されてきた。年末年始に限らず、何をやっても嫌われない。トクな局である。

 最近では10月にドラマ「絶メシロード season2」の第7話を再放送するはずが、間違えてseason1の第7話を流した。あり得ないミスだった。

 同じことを他局がやらかしたらSNSでボコボコにされそうだが、テレ東を責める意見は少数だった。ネタにされた程度。清貧の民放と思われているせいだろう。

 テレ東の2022年度第1四半期決算(今年4~6月)の売上高(テレビ局単体)は約276億円。民放トップの日本テレビ(同)が約713億円だから、半分以下だ。制作費の総額もテレ東は日テレの半分以下である。

 にもかかわらず、テレ東はキラリと光る個性的な番組を生み出す。「充電させてもらえませんか?」や「家、ついて行ってイイですか?」がそう。他局に比べ、やらせや不祥事も圧倒的に少ない。だから視聴者はテレ東びいきであり続けている。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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