オリビア・ニュートン・ジョンさん、「イルカ漁批判」騒動で吐露した「謝罪の言葉」【2022年墓碑銘】
満ちては引く潮のように、新型コロナウイルスが流行の波を繰り返した2022年。今年も数多くの著名な役者、経営者、アーティストたちがこの世を去った。「週刊新潮」の長寿連載「墓碑銘」では、旅立った方々が歩んだ人生の歓喜の瞬間はもちろん、困難に見舞われた時期まで余すことなく描いてきた。その波乱に満ちた人生を改めて振り返ることで、故人をしのびたい。
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1976年、英国出身の歌手、オリビア・ニュートン・ジョンさんが単独来日し、2週間の公演で13万人を動員。チケット発売の2日前から売り場に行列ができたほどの過熱ぶりだった。
ラジオDJで音楽評論家の山本さゆりさんは当時を振り返る。
「親しみやすいかわいらしさがあって、女性からも好かれました。歌がうまくても圧倒するほどではなく、心地よく楽しめる。スターなのに素朴で、観客の掛け声に応じたりと表情も豊か。何事にも一生懸命でした」
48年、英国のケンブリッジ生まれ。オーストラリアで育つ。父親はドイツ語の教授。母方の祖父は54年のノーベル物理学賞受賞者だ。
学問より音楽を志し、65年にオーディション番組で優勝、英国に戻り翌66年に歌手デビュー。74年発表の「愛の告白」が全米1位を記録し、グラミー賞の最優秀レコード賞の栄誉に輝く。
75年の「そよ風の誘惑」も全米1位を飾り世界的な人気を確立し、日本でも大ヒット。満を持しての翌76年の来日公演だったのだ。ちなみにこの曲は電話の保留時によく使われている。
言葉に責任を持つ誠実さ
音楽評論家の増渕英紀さんは言う。
「日本の歌謡曲のように、すっかり一般に溶け込んでいました。歌声も言動も自然体で、嫌な印象を与えない珍しい人でした」
78年に騒動が起きる。漁師がイルカを殺すとは日本人は野蛮だ、動物愛護の精神に欠ける、と来日公演の取りやめを口にしたのだ。
音楽評論家でオリビアさんと半世紀近い交友のある、湯川れい子さんは思い出す。
「オリビアさんが率先したのではなく、他の歌手の意見に乗ってしまったんですね。そこでイルカによって魚が逃げたり漁具が壊されたりしていることや、漁の文化について調べ、英訳してオリビアさんに送りました」
返事はすぐに届いた。
「テレビのニュースで血に染まる海を見て、漁師の事情を知らず短絡的に非難してしまった、と謝罪の言葉もありました」(湯川さん)
発言を撤回、来日したが、すき焼き好きを公言していたせいで、自分たちは牛なら殺すくせにとにらまれた。
「私がDJをしていたラジオ番組に出演して、自分の言葉でファンにも説明した。イルカと漁の共生のためにと、公演の利益から2万ドルを寄付しています。自分の言動に責任を持つ誠実さを感じました」(湯川さん)
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