羽生善治VS藤井聡太、「王将戦」の下馬評 AIをしのぐ“羽生マジック”が起こる可能性は?
52歳のレジェンドこと羽生善治九段と、20歳の怪物・藤井聡太五冠が激突する大一番まで、あと10日余り。前哨戦で敗北した羽生は“AIへの懐疑”を漏らしたが、その真意はいかに――。
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7年ぶりに王将位への挑戦を決めた羽生と、タイトル戦負けなしの藤井による「王将戦」。来年1月からの七番勝負に羽生が勝てば、「タイトル獲得100期」という前人未到の大記録を打ち立てることになる。
だが、12月8日の「棋王戦」挑戦者決定トーナメント敗者復活戦では、藤井五冠に敗れた羽生九段。「王将戦」の前哨戦と目されていただけに、大勝負を控えどんな心境なのか。
それを知る手がかりは、敗戦翌日に放送された「報道ステーション」(テレビ朝日系)にあった。番組では、藤井らAIを駆使する若手に話題が及ぶと、羽生はこう持論を述べたのだ。
「AIが評価を下すことが、人間の個性とか幅を広げるかどうかは、まだ分からないところで、逆に狭めてしまう可能性もある」
最新ツールに懐疑的な発言に聞こえるが、今や棋士にAIは欠かせない相棒だ。数秒で数億通りの手を計算し最善手を導くAIの分析を、藤井ら若手世代は積極的に取り込む一方、羽生は出遅れたとの指摘もある。
「人間らしい手」
「羽生九段は、AIを全否定しているのではなく、どのように取り入れるべきかを考え続けているのでは」
と話すのは、将棋ライターの松本博文氏だ。
「目的地までたどり着くのに『崖を登るルートが最短』とAIが示しても、人間同士の対局では持ち時間などさまざまな制約があって難しい。ならば、AIとは別のアプローチを考えることもあるでしょう。また対局がAI研究の発表会になってしまうと、棋士の存在意義がなくなるとも、羽生さんは思っているのでは」
来る「王将戦」の下馬評は、AI研究の最前線をいく藤井勝利が多数を占めるが、松本氏はこうも言う。
「AIで事前研究し定跡化できるのは序盤から中盤まで。そこで決定的な差をつけられなければ、あとは力の勝負です。羽生九段はこれまで、終盤に予測のつかない手で何度も逆転劇を披露してきた。藤井戦でもそうした“羽生マジック”が見られるかもしれません」
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