「黒田サプライズ」はインフレ抑制に有効だが…金融危機の火ダネになりかねない悪影響も
日本銀行は12月20日の金融政策決定会合で長期金利の上限を0.25%程度から0.5%程度に引き上げたが、市場関係者にとってまさに「サプライズ」だった。
黒田総裁を始め日銀幹部は最近まで「長期金利の上限引き上げは事実上の利上げになる」と否定的に語っていたからだ。
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日銀の突然の方針変更には、利上げを急ぐ米国との金利差拡大で歴史的な水準にまで円安が進んだという事情が大きく関係している。円安は輸入物価の上昇を通じてインフレを加速させることから、日銀に対する批判は高まるばかりだった。
1ドル=151円まで円安が進んだ10月下旬、首相官邸でも大規模緩和の副作用への懸念が強まっていた。首相周辺からは「物価高に財政出動で対処する手法は永続的ではない」と日銀への不満ともとれる声が出ていたという(12月21日付日本経済新聞)。
海外金利の上昇圧力を受け続ける中で、日本の国債市場の機能が低下していたことも要因の1つだった。長期金利の指標である新発10年物国債の売買が成立しないケースが起きており、「企業の起債など金融環境に悪影響を及ぼす恐れがある」と懸念されていた。
その後、米連邦準備制度理事会(FRB)を始め世界の中央銀行の利上げのペースが鈍化し、円安圧力は弱まった。日銀への批判が沈静化したタイミングを見計らってなされた今回の決定だったが、かえって市場の動揺をもたらす結果となってしまった。
日銀は今回の決定を「利上げではない」と説明しているが、市場は「2013年から続いてきた大規模緩和の事実上の縮小だ」と受け止めたことから、日銀の決定直後に為替市場で円が急騰した(1ドル=130円台にまで一気に上昇)。
今後の見通しについても「1ドル=125円台は確実だ」との予測が大勢を占め、120円を切る円高を予測する投資家も現れている。
金融緩和で進んだ円安が円高に転じれば、輸入インフレが収まることは言うまでもない。原材料や食料品などの価格は徐々に下がり始め、電気やガスの料金も3ヶ月後には下がる可能性が高いと予測されている。40年ぶりのインフレに苦しむ一般の家計にプラスの効果をもたらすのは間違いないだろう。
だが、マイナス面があるのも事実だ。
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