楽天、石井一久がGMを離れ「監督専任」に…それでも常勝化できない“怪しい雲行き”

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「シーズン中の事務作業は球団本部で」

 筆者がもうひとつ気になるのが、GMの“後任”が発表されていない点だ。石井監督は、球団を通じて「今までも、1勝でも多く積み重ねること、チームが勝つことを考えてきましたが、アプローチを変え、来シーズンに臨むことを決めました。シーズン中の事務作業は球団本部で行います」というコメントを発表している。

 注目すべきは、コメント末尾の「シーズン中の事務作業は球団本部で行います」という部分だ。あくまで「シーズン中の」と断っているところに、オフの期間は編成にも関わるというメッセージと受け取ることもできる。来年以降、再び石井監督がGMに復帰する可能性もない話ではなさそうだ。

 また、前出の記者はこのコメントについて“別の点”が気になるとも話した。

「球団から出たコメントなので、要約されている部分はあるかもしれませんが、GMの仕事を『シーズン中の事務作業』と表現しているのは気になりますね。GMの役割は多岐に及ぶため、“事務作業”だけではありません。日本のプロ野球では現場の発言力が強く、編成に対しても、影響が及ぶことがあります。楽天は歴史が浅いことから、比較的フロントの発言力が強い球団と言われていますが、“事務作業”と言い切ってしまっているところは、編成やフロント業務を軽視していると取られることも十分に考えられますね……。そんな中で来シーズン、結果を残せなければ、石井監督の立場はかなり危うくなるのではないでしょうか」

 かつて“球界の寝業師”と言われ、西武とダイエー・ソフトバンク黄金時代の基礎を築いた根本陸男は、両球団で当初、監督を務めながら主に編成を担当し、チームの基礎ができたところで勝てる監督を招聘して成功を収めている。

 石井監督についても同じ道を歩む可能性があったが、“監督専任”となったことで雲行きが怪しくなってきた。果たして、ここからオリックスやソフトバンクに対抗するチーム作りができるのか。今後の楽天、石井監督の動向に引き続き注目したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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