妻の連れ子が留学のために風俗でアルバイト…黙認したアラフォー夫にある晩起きた、“信じ難い事件”とは
去っていった千穂さん
大学を卒業したら留学するということで準備が進んでいたはずなのだが、コロナ禍もあって延期となった。その間も繁雄さんと千穂さんの関係は続いていた。そして今年の初め、千穂さんが妊娠していると繁雄さんに伝えた。
「まさか、と思わず言ったら『全部、明るみに出して結婚しない?』と千穂に言われ、そんなことできるはずないだろと。それを聞いた千穂は『ママの意見も聞いてみないと』と言うので、思わず千穂の首を締めそうになりました。産まれて初めて自分の中に殺意を感じて、自分自身が驚きました。千穂もびっくりしたように僕を見ていた。その後、千穂は流産したそうです。本当は中絶したのかもしれない。でももう、僕は真実を知りたいとも思えなくなっていた」
千穂さんは急に手続きを早め、この夏、イタリアに旅立っていった。繁雄さんは虎の子の500万円を千穂さんにプレゼントした。有希恵さんは「あなたがそこまでしなくても」と言ったが「有希恵が大事に育ててきた“娘”だから」とごまかした。
千穂さんが最後まで母に何も言わなかったのは、繁雄さんを思っていたというより有希恵さんのためだろう。有希恵さんを母として愛しながら、女としては嫉妬していたのかもしれない。
「いつバラされても不思議はないので、千穂がいないからと安心はできません。ただ、今思えば、僕自身も千穂が好きだった。父親が図らずも若い女のほうがいいに決まってると言って僕は激怒したけど、千穂の体に溺れたのは確かです。父を怒る資格はないですね。もちろん一方で、有希恵との関係を壊す気はまったくありません。有希恵は僕が生きていくうえで、いちばん大事なパートナーだから」
それにしても、酔って帰ったあの晩のひとつのできごとから思わぬ展開が待っていた。あの日、飲んで帰らなければ何もなかったはずなのにと嘆く繁雄さん。人生、何が起こるかわからない。一寸先は闇という言葉が浮かんだ。
***
子連れ結婚の経験者の半数以上が「子連れ再婚はおすすめしない」と答えている――と報じたのは、2017年3月8日配信の読売新聞オンライン記事 。NPO法人M-STEPが119名を対象にした実態調査の結果で、同法人の新川てるえ理事長は〈それだけ子連れ再婚家族は生きにくさを感じ、様々な問題を抱え、もがき苦しんでいる人たちもいるのです〉と述べている。
妻とも血縁関係のない娘と同居し、かつ悩みの内容も別次元であろう茂雄さんのケースを、世の子連れ再婚者の例にそのまま当てはめることはできない。とはいえ本人の悩みはいちおう深刻のようだ。
「再婚相手の娘に迫られて、関係をもつようになり、妊娠させてしまった」。茂雄さんの体験をまとめれば、つまりこういうことになる。気になるのは、茂雄さんの言葉の端々に感じられる生々しさだ。「でも千穂は確かに魅力的」「千穂の体に溺れたのは確か」……。亀山氏の指摘するとおり罪悪感とスリルの間を行ったり来たりしている。
茂雄さんが千穂さんを、娘ではなく女性としてみていることは論を俟たないだろう。その点で、彼がしているのはまぎれもない不倫だ。留学する千穂さんに贈った500万円も手切れ金として読み取ることもできる。彼女が留学から帰ってきたときに、二人の関係はどうなるか。「僕自身も千穂が好きだった」と言い切り、父である前に男性であることを隠そうとしない茂雄さんが、「誘惑してくる」という千穂さんを振り切れるとは思えない。
[4/4ページ]