女優「野村昭子さん」、演技も人柄も飾らない「渡る世間は鬼ばかり」「赤ひげ」の名脇役【2022年墓碑銘】

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野村さんに育ててもらった

 映画評論家の白井佳夫さんも思い出す。

「黒澤監督は脇役にもこだわり、使い方がうまい。面白そうな役者を自分でも見つけてきた。野村さんの演技、たたずまいでその場面がリアルになりました」

「男はつらいよ フーテンの寅」(70年)、「恍惚の人」(73年)、「砂の器」(74年)など映画でも一層重宝される。

 テレビも放っておかない。NHK連続テレビ小説「おはなはん」(66年)で脇役ながら注目された。「渡る世間は鬼ばかり」の他にも、市原悦子さん演じる家政婦の上司役を務めた「家政婦は見た!」など話題作が多い。

 01年に夫で演出家の増見利清さんが亡くなり、ひとり暮らしに。親族が高齢を気にかけ、よく訪ねていた。

 有名女優なのに、ごく普通に近所づきあいをしていたのが野村さんらしい。お隣さん同然のすし屋によく出かけるのが楽しみだった。

 数日間、野村さんの姿を見かけないことを心配した近所の人から知らせを受けた親族が、7月1日、駆けつけた。自宅寝室で倒れている野村さんを発見、死亡が確認された。享年95。猛暑が影響したと見られる。

「演技も人柄も飾りません。(藤田)朋子が悲しんでいましたが、ドラマの中だけでなく実際に野村さんに育ててもらった気持ちなのだと思います」(石井さん)

 広く親しまれ、観た者の記憶に自然と刻まれた。役者にとって何よりの名誉だ。

デイリー新潮編集部

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