「FF」に「刀剣乱舞」も… なぜ歌舞伎界が“ゲーム頼り”に?
コロナ禍が小康状態にあった一昨年8月に公演を再開したものの、東京・歌舞伎座の観客動員は苦戦が続く。起死回生の起爆剤と期待された〈十三代目市川團十郎白猿〉の襲名興行も不発で、関係者の表情は曇ったままだ。
梨園関係者が肩をすくめる。
「昭和60年に行われた先代の十二代目團十郎襲名興行は、3カ月にわたる一大イベントでした。当時は観客動員が伸び悩み、日常的に大量の招待券を配っては客席を埋める状態が続いていた。それが大名跡である團十郎の襲名興行を機に観客が戻ったんです。順調に世代交代も進んだことで、新たな歌舞伎ブームも起こりました。その再来を期待していたんですが……」
いまも続く十三代目團十郎の襲名披露公演は、空席が目に付く日も少なくない。
演劇担当記者が解説する。
「12月の昼の部は、團十郎(45)の長男・市川新之助(9)が主演する『毛抜』がメイン。夜の部も口上以外は團十郎の『助六』、長女の市川ぼたん(11)の『團十郎娘』と、まるで團十郎のファミリー公演のよう。口上に顔をそろえるのも、松本幸四郎(49)、市川猿之助(47)、今月から復帰した市川中車(57)のほかは脇役が多い人たちばかり。イマイチ華やかさに欠けるんですよね」
ゲーム好きの尾上菊之助自ら企画書を
危機感を募らせた松竹は、新たな打開策を打ち出した。
「世界的な人気を誇るロールプレイングゲーム『ファイナルファンタジーX』の歌舞伎化です。今年はシリーズ1作目の発売から35年。その記念公演として来年3月を予定しています」
主演は幼い頃からゲームに親しんできたという尾上菊之助(45)だ。好きが高じて、今回の公演では自ら企画書をまとめたという。
「コロナ禍の影響で気分が落ち込んでいたある時、10年ぶりに『ファイナルファンタジー』をプレーしたら精神的に救われたのがきっかけだったとか。会場は新豊洲のIHIステージアラウンド東京で、舞台が360度回転するのがウリ。上演時間は実に9時間に及ぶ、超大作になりそうです」
来年7月には、擬人化された日本の名刀が歴史を改変しようと企む敵と戦う育成シミュレーションゲーム「刀剣乱舞」も、新橋演舞場で上演される。
「イケメン剣士たちには女性ファンも多く、舞台や映画も大人気。4年前にはミュージカル版の出演者がNHK紅白歌合戦に登場し、大きな話題になりました。出演は尾上松也(37)、尾上右近(30)らで、松也は演出にも挑戦するとのこと」
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