マスターズがリブゴルフ選手の受け入れを発表 その思惑とゴルフ界の反応は?
一部選手は納得するも、反応はさまざま
オーガスタ・ナショナルの決定を受けたゴルフ界の反応はさまざまだ。
歓喜に沸いたリブゴルフは即座に、このニュースをトップニュース扱いで公式ホームページに掲載した。
世界屈指のパワーヒッターで元PGAツアーのビッグスター、そして2020年全米オープン覇者であるブライソン・デシャンボーは、「オーガスタ・ナショナルは正しい決断を下した」と絶賛した。
一方、PGAツアーは、リドレー会長の声明が発されてから半日以上が経過しても、このニュースに関する記事を公式ホームページに掲載せず、完全無視状態だった。そこにPGAツアーの落胆と不快感が見て取れる。だが、PGAツアー選手の大半は、むしろオーガスタ・ナショナルの決定に頷いている様子だ。
米ゴルフウィーク誌が行なったアンケートによると、ジャスティン・トーマスは「資格を満たしているということは、出場に値するということ。彼らは間違いなくマスターズに出場するに値する」と語り、ザンダー・シャウフェレも「資格がある選手の出場を認めない理由はない」とリドレー会長の言葉に賛意を示している。
PGAツアー選手の中では最もストレートな物言いでリブゴルフ選手とこれまで何度も激論を交わしてきたビリー・ホーシェルでさえ、「個人的にはリブゴルフ選手がメジャーに出ようと出まいと気にもしていないが、メジャーに出る権利を獲得している選手はメジャーに出場して然るべきだと思う」と語っていたことが印象的だった。
ただし、9・11同時多発テロへのサウジアラビア政府の関与に強い疑いの目を向けている被害者とその遺族の団体は、「とても残念な決定だ」「オーガスタ・ナショナルに裏切られた気がしている」と強い反発を示し、反対運動を行なっていく意思を示している。
他のメジャー大会にも影響
リドレー会長の声明には、「今後のマスターズ出場資格の修正に関しては、4月に発表する」という一文も記されていた。
現状では、マスターズ出場資格の中に「世界ランキングのトップ50以内」という条件が明記されているのだが、今後はその部分が修正される可能性が高いと見られている。最終結論は4月に発表とされているが、どういう方向性で修正されるのかは声明には明記されていなかった。
米メディアの多くは、世界ランキングのポイントが稼げず、下降の一途のリブゴルフ選手たちが今後もマスターズに出場できるよう、出場資格の指標から世界ランキングを外す方向でオーガスタ・ナショナルは修正を検討していると見ている。
だが、それとは正反対の推論も成り立つ。たとえば、今年は現段階で出場資格を満たした78名のうち16名がリブゴルフ選手だったため、オーガスタ・ナショナルは来年のマスターズに「やむを得ず」受け入れることにしたが、来年以降に関しては、あらかじめ出場資格を変更し、リブゴルフ選手を排除する可能性も、もちろんゼロではない。
すでにSNSには、ゴルフファンのさまざまな意見が飛び交っており、「これで来年のマスターズでは、リブゴルフ選手たちが(PGAツアーに忠誠を誓う)ロリー・マキロイにハーイと笑顔で挨拶することになる」などと、からかい半分の書き込みも目に付く。
オーガスタ・ナショナルがリブゴルフ選手を受け入れることでゴルフ界の混乱や喧噪がさらに増すのなら、今後、オーガスタ・ナショナルはリブゴルフ選手の出場を制限するという主張だって成り立つといえば成り立つわけで、もはや何が正しいかの判断は、それぞれの良識と良心次第だ。
そして今回、オーガスタ・ナショナルが示した彼らの良識と良心は、おそらくは他の3つのメジャー大会の主催者に大きな影響をもたらすだろうと私は感じている。
とはいえ、最終的にどんな方向へコトが進んでいくのかは、今は誰にもわからない。だが、とにもかくにもオーガスタ・ナショナルが最初のアクションを起こしたことは、これからのゴルフ界全体の大きな動きの始まりだと言っていいのではないだろうか。