いま最も嫌われるのは「人を傷つける笑い」ではなく「愛想笑いの強要」? くりぃむ上田に石橋貴明…大御所芸人が「老害」化した本当の理由
「老害」タレントたちの振る舞いの難しさ 今のお笑いに必要なのは、自虐ではなく自己完結スキル?
炎上しがちな大物タレントたちも、同様の印象を与えるのだろう。「横暴」「上から目線」と言われがちなキャラばかりだ。
平成のバラエティーを見てきた世代からすると、彼らの通常運転だな、という印象だけにびっくりしてしまう。「金八先生」のイメージが強すぎて、例えとんちんかんなことを言っても先生然として扱われていた武田さん。「うんちく王」と呼ばれるようなうっとうしさを漂わせ、シニカルなツッコミが持ち味の上田さん。美人と見ればベタベタ触ることで、女性ゲストを持ち上げようとしていたタカさん。たしかに今の価値観に照らし合わせると、年下や女性に対してのリスペクトが足りないダメな中高年というように見えるかもしれない。ただ彼らも彼らで、時代錯誤のめんどくさいキャラを演じることも役目と思っているふしがある。今さらものわかりのいい、優しい先輩キャラにはなれないことを、彼ら自身が一番わかっているだろう。
ただ平成とひとつだけ違うのは、今までは彼らにツッコミを入れる人が常にそばにいたということだ。上田さんには有田さんが、タカさんにはノリさんが「お前、調子に乗るなよ」を代弁してくれていたので、エンタメのお約束が成り立っていた。けれども今は、セットで出ることは少ない。自虐で丸く収めるというやり方もあるが、かえって気まずい空気になってしまう。
クズ芸人たちが本当にクズにならないのは、自虐ではなく自己完結のスキルが高いからだろう。相方や芸人仲間に借金をしたり酒席で迷惑をかけようと、「それが何か」と開き直るだけで、自分を卑下しない。大御所MCたちのように、後輩や年下の共演者を巻き込むことはなく、ただひとりクズとしてそこに立つ。ツッコミ役さえ不要と言わんばかりに。本当の犯罪には手を染めていないということも重要だが、際立った自己完結スキルの高さが、ある種の潔さやまっすぐさとして受け入れられているのではないだろうか。
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