メッシが羽織った「黒い服」の重大な意味 一着40万円…賛否の声に見る“多様性のせめぎ合い”

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隠れてしまったユニフォームのロゴ

 中東の人々にとっては喜ばしいメッシのビシュト姿だったが、その一方でトロフィーを掲げる瞬間はアルゼンチンの代表ユニフォームだけで見たかったという思いからか、着せたことに批判的な声も上がっている。

 ABEMAで解説をしていた元日本代表の本田圭佑氏も「メッシ、着させてもらったアレ(ビシュト)、脱いだ方がいいんちゃうかな。カタール側の着てほしいというあれは十分役目果たしたと思うんで」とコメントしていた。

「あのタイミングで民族衣装を着せることが、本当に適切だったのかに関して多くの批判があることは理解できます。ビシュトを着たことによってユニフォームにあるアディダスのロゴが隠れたことは一波乱あったのではないでしょうか。批判的な声はヨーロッパや、それ以外からも多数上がっていますし、あの短時間の間に多様性のせめぎ合いが凝縮したと感じています」(鷹鳥屋さん)

 ただカタールの首長にかけられたビシュトをすぐに脱いでしまえば、カタール側のメンツを潰してしまう。鷹鳥屋さんは「脱ぐという選択肢もあった中、撮影にビシュトを着て臨んだメッシ選手の大人な対応は尊敬に値します」とメッシの行動を賞賛する。現地カタールではメッシと同じ姿になろうとビシュトを買う、メッシのユニフォームを着たサポーターもたくさんいたという。

「我々サウジアラビアは…」

 アルゼンチンが優勝を果たしたことで、結果的にグループリーグ初戦で今大会唯一メッシ率いるチームを破ったサウジアラビアの勝利の価値も上がった。

「実際、サウジアラビアはアルゼンチンを唯一倒した国ということでとても喜んでいて『となると、我々サウジアラビアの順位は何位なんだろうか』と話もされるほどです(笑)。メッシ選手は中東地域でもスーパーヒーローなので、優勝への祝福の気持ちはとても強いです」(鷹鳥屋さん)

 カタールと同じアラブの国であるモロッコがベスト4に残る快進撃を見せ、同じアジアの国である日本が活躍したことも現地では盛り上がったという。その一方で開幕直前には主催国カタールに対し、外国人労働者などに対する人権侵害の非難が欧米を中心に上がった。

「開催前はさまざまな国から不評悪評があり、政治や主義主張が時に交差して大変だったカタールでのワールドカップですが、とても印象的な大会になってよかったです。各試合の試合内容が凄すぎて、些事が吹っ飛んでしまったという印象もあります」(鷹鳥屋さん)

 中東で初となったワールドカップは、ピッチ内外でも多種多様な人間がいることを改めて知るきっかけにもなったのではないだろうか。

徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。現在は退社し雑誌、ウェブで記事を執筆。個人ブログ「OUTCAST」も運営中。Twitter:@tatsunoritoku

デイリー新潮編集部

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