「カスハラ」の7割以上が男性だった!50代以上で顕著に 昭和・平成の“金銭要求系”のクレーマーとの一番の違いは?

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かつては「金目的」だった

 ただ、従来のモンスタークレーマーと、現在、増加中のカスハラは似て非なるものだ。その違いは一言で言えば、「目的」だ。それを理解するのにうってつけの「事件」がある。

 今から18年前、有名牛丼チェーンの店長が常連客から毎日のようにクレームを受けていた。この客はいつも「持ち帰り牛丼」を購入していたが、そのたびに牛丼の汁が漏れてしまうと文句を言って、連日、苦情電話をかけてくることもあった。

「ほらみろ、昔もカスハラなるものはあったじゃないか」と思うだろうが、実はこの客がクレームを入れたのは嫌がらせではなく、「金目的」だった。店長につきまとっては「返金」名目で牛丼代相当の金を払わせていたのだ。苦情対応だけではなく、金銭まで要求されていた店長は次第に心を病み、最終的にはこの客を刃物で刺し殺してしまう。これは典型的な「モンスタークレーマー」が引き金となった最悪の事件として今も語られている。

 一般的に「クレーム」というのは、消費者が事業者に対して商品やサービスの不備を指摘し、商品の返品や交換、さらには追加サービスの提供を求める「条件闘争」の側面が強い。それが行きすぎてモンスター化すると、「精神的苦痛に対する賠償金を払え」などと高額な金品を要求したりするのだ。

金品の要求ではなく

 一方、令和のカスハラにはそのように何か物資的な恩恵を得ようという目的はない。客という優位な立場を使って、店員や従業員を侮辱する「ハラスメント」自体が主目的だ。それはさまざまな調査でも明らかになっている。

 例えば、前出・交運労協の調査で客からの「迷惑行為」について質問したところ、最も印象に残っている事例として挙がったのは「暴言」の49.7%で、「何度も同じ内容を繰り返すクレーム」(14.8%)、「威嚇・脅迫」(13.1%)、「権威的(説教)態度」(9.4%)と続く。では、昭和・平成のクレーマーたちがゴールとしていた、「金品の要求」はどれくらいかというと、わずか0.4%に過ぎない。

 このようにモンスタークレーマーとの違いがわかってくると、なぜカスハラが新型コロナ発生後に増えているのかという理由も想像できる。それは「ストレス発散」だ。

 歌手・三波春夫がステージに立つ時の心境を述べた「お客様は神様です」という言葉が、顧客第一主義と誤解されて広まってしまったように、日本社会では、モノを売ったりサービスを提供したりする側はとにかく「客」にペコペコと頭を下げなくてはいけないという考え方が一般的だ。そして、長引くコロナ禍でイライラした人々が、そういう弱い立場の人たちを「サンドバッグ」のようにたたくことで、ストレスを発散している可能性があるのだ。

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