“暴動”も起きた韓国のマンションバブル崩壊 国民の借金体質が金融・通貨危機を招く
IMF、「韓国の泡は10%」
――金融を緩和したのは韓国だけではありません。
鈴置:確かに、多くの国が韓国と同じ様に激しい金利変動に直面しました。もともと超低金利で、米国追従の利上げにも動かなかった日本は世界の例外です。
IMF(国際通貨基金)も、コロナに対応した金融緩和でアジア太平洋地域の不動産価格が急騰。その後の金融引き締めにより、急落するリスクが膨らんでいる――と警告しました。12月14日に発表した「Housing Market Stability and Affordability in Asia-Pacific」です。
実態以上に膨れ上がった「泡」部分を推計したのがミソで、コロナ以前と比べニュージーランドで約20%、韓国と豪州では約10%程度、不動産価格が下落するリスクがあると分析しました(11ページ)。
韓国は「ハイリスク国」に分類されたのです。理由は2019年の第4四半期から2021年の第4四半期にかけての不動産価格の高騰が顕著だったことです(3ページ)。
「コロナ由来」と「人口由来」
韓国の危うさは構造的な要因からも来ています。「コロナ由来のバブル」の前から、「人口由来のバブル」が発生していたのです。
グラフ「韓国のマンション価格の年間変動率」を見ると、それが分かります。2016年から2018年にかけて――コロナ以前からソウルのマンション価格が上がっています。
生産年齢人口のピークが2019年でしたから、「ピーク前のカネ余り」が発生。投機の対象にしやすいソウルのマンション市場にホットマネーが流れ込んでいたのです。
KB国民銀行によると、2017年5月の発足以来、文在寅(ムン・ジェイン)政権の4年8カ月でソウルのマンション価格は2・2倍に上昇しました。「泡」の相当部分はコロナ以前に生じていたのです。
2019年にはいったんバブルが収まったのですが、予期せぬコロナ対策でまた「泡」が膨らんだ。今後、生産年齢人口の減少と共にマンション需要が減っていくのは確実です。コロナによる「泡」が消滅するだけでなく、実需も細っていくのです。
「高い山」から「深い谷」に堕ちたうえ、その谷底も泥沼で、さらにずぶずぶと沈んでいく構図です。韓国の「今」は、日本で言えば30年前――1992年頃に当たります。
なお、生産年齢人口の減少が不動産バブルを呼ぶ仕組みと、韓国の同人口が急減する見通しに関しては『韓国民主政治の自壊』第4章第3節「ついに縮み始めた韓国経済」で詳述しています。
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