大阪市の路上全面禁煙で「252億円の悪影響」との試算も 深刻な喫煙所不足が

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喫煙所不足を示唆するデータ

 喫煙所不足を示唆するデータは他にもある。大阪に先行して路上喫煙を全面禁止とした東京の千代田区(昼間人口85万人)では、現在73カ所。目下、これを100カ所に増やす予定だが、一方の大阪市の昼間人口は4倍の354万人。なのに120カ所だけというわけである。この数字を見ても、市の計画が不十分であることは一目瞭然だ。

 それだけではない。市が堂島公園に造ったものと同じ閉鎖型の喫煙所は一つ約1400万円かかるが、一度に入れるのは10人程度。待ちきれない外国人観光客が勝手に路上でスパスパ始めたら、スムーズに過料を徴収できるのだろうか。海外では路上喫煙が基本的に可能という国が少なくない。

 そこで、当の大阪市に聞くと、

「喫煙所は閉鎖型だけでなく、開放型も合わせて造ってゆきます。正直、120カ所でも喫煙所の用地確保は簡単ではありません。喫煙所の設置で先行している東京都にも教えてもらいながら準備を進めているところです。もちろん、喫煙所が少ないというご批判はあるでしょうが、日本は人口減もあって喫煙人口も漸減している。慌てて造り過ぎてしまい、無駄になってはいけません。とりあえず計画通り造ってみて、それで足りるかどうか様子を見ようということです」(環境局の事業部事業管理課)

目的と手段のズレ

 しかし、大阪市のやり方は、そもそも目的と手段がズレているのではないか、と指摘するのは、神奈川県の受動喫煙防止条例の制定に関わった東海大学の玉巻弘光名誉教授だ。

「喫煙規制を行う一番の目的はタバコを吸わない人の受動喫煙を減らすことです。それならば、路上喫煙禁止地区をむやみに広げるより、受動喫煙が発生しやすい屋内喫煙の規制を先に徹底するべきなのです。松井市長は路上喫煙禁止の目的として“万博に向けて”と説明しましたが、これでは喫煙規制が受動喫煙を防ぐためというより、吸い殻のポイ捨てを防ぐ環境美化の手段としてやっているように見える。事実、大阪市の喫煙所の設置計画を、ゴミ対策などを行う環境局が担当していることからもそれはうかがえます」

 喫煙所設置計画は年明けの大阪市議会で予算案が審議される。誰のための喫煙規制なのか。市民は煙に巻かれたままである。

週刊新潮 2022年12月15日号掲載

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