安倍元首相銃撃事件を映画化した「足立正生監督」が、外国特派員協会で吠えた一部始終

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リサーチの有無

足立監督:贅沢を言えばきりがありません。最低限の予算、最低限のスタッフと俳優さんがいれば、絶対に作ろうと思っていました。私が作ろうと思った動機が重く、みんなに大変な想いをさせたとは思っています……真面目に答えすぎてる?

イタリアメディア:(日本語で)そのままでいいです。(英語に戻り)映画の準備をする中で、実際に当事者、例えば(山上容疑者の)母親に会われたりということはありましたでしょうか? ニュースなど調べられる範囲でリサーチは行われましたか?

足立監督:この映画は現実の事件を題材にしていますから、色んなニュースを集めながら勉強しました。が、むしろ事件の一報を聞いた時から、事件を引き起こした主人公──私の映画では「川上」という名前ですが──にまつわることをドキュメンタリーで撮るのではなく、彼に対する評価を物語にしたいと考えていました。

 なので、一般的なニュースを深掘りしてリサーチする、あるいは、彼を改めてリサーチする必要はないと考え、「やりたいことを彼はやったんだ」ということだけを軸に作ろうと思ったんです。

事件の印象

イタリアメディア:母親にも会っていないということですね。映画の中で主人公の父親の麻雀仲間がレバノンに行ったというエピソードが出てきます。これは事実に基づいていますか? あるいはフィクションですか?

足立監督:私も長い間、“海外出張”をしていました。その時、リッダ闘争(テルアビブ空港乱射事件)を引き起こした3人のうち1人が、賭け麻雀で学費を稼いでいたということは知っていたんですね。

 そして山上容疑者の伯父が弁護士なのですが、容疑者本人に「実はお前の親父は、リッダ闘争に参加した1人と麻雀仲間だった」ということを話したようなのです。私が“出張”中に知っていたこととクロスするので、エピソードとして使うことにしました。私の作り話ではありません。

ジャパンタイムス:映画は実際に起きた元首相の銃撃事件に基づいています。政界と統一教会とのつながりが徐々に浮かび上がり、政府を揺るがす事態になりました。映画を製作した当初の印象と、映画を作り終えた今の印象は、違うものですか?

足立監督:映画の主人公は「自分が起こした行動の結果について考えたことはない」ということを2回くらい言っています。山上容疑者も「自分がやったことが、世の中で多少は隠蔽されてきたことの暴露になれば言うことはない」というようなことを、もっと上手に、簡明に言っているんですね。

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