安倍元首相銃撃事件を映画化した「足立正生監督」が、外国特派員協会で吠えた一部始終
12月13日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で映画「Revolution+1」(配給=太秦)が上映され、足立正生監督(83)などが出席した記者会見が開かれた。安倍晋三元首相(1954~2022)を銃撃した山上徹也容疑者(42)をモデルにしたこともあり、映画は製作発表の時点から激しい論争を引き起こしていた。
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【写真を見る】かつて足立監督の作品に共鳴し、イスラエルの空港で乗客など26人を殺害するテロを起こした岡本公三容疑者
現実の山上容疑者は殺人罪で送検され、現在は鑑定留置中。映画の主人公は「川上哲也」となっているが(註)、実際の事件と重なり合う描写もかなり多い。
映画は「川上」の半生を描く。父の自殺や兄の難病に苦しんだ母親は、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に救いを求める。多額の献金で家庭は崩壊。主人公は手製の銃を製造し、当時首相だった安倍氏を銃撃して殺害するというストーリーだ。
9月27日に行われた安倍氏の国葬に合わせ、制作途中である50分の「イベント版」が上映。その後、編集作業などを重ね、上映時間75分となった「本編」が、外国特派員協会で試写された。12月24日から、横浜、名古屋、大阪などでロードショー公開が決まっている。
この映画が毀誉褒貶の論争を引き起こしている理由として、足立監督の特異な経歴も挙げられるだろう。日本大学芸術学部映画学科に入学すると自主製作映画で脚光を浴び、その後、映画監督でプロデューサーの若松孝二氏(1936~2012)が設立した若松プロダクションに参加。ピンク映画の脚本を数多く手がけた。
1971年、若松氏と共にカンヌ国際映画祭に参加。帰国途中、パレスチナ解放人民戦線と接触し、映画「赤軍-PFLP・世界戦争宣言」を撮影・製作した。
「作りたいから作りました」
この作品に共鳴した岡本公三容疑者(75)が、奥平剛士(1945~1972)、安田安之(1947?~1972)と共にベイルートに渡り、1972年にテルアビブ空港乱射事件を引き起こしたことが特に知られている。
13日の記者会見には足立監督のほか、プロデューサーの藤原恵美子氏、主演のタモト清嵐(そらん)が出席した。
活発な質疑応答が行われたが、本稿では足立監督とのやり取りだけを紹介する。映画の具体的な内容に触れた発言などは割愛した。
読みやすさを優先し、文意の補足、反復表現の削除などを行っている。この点についてもご了承いただきたい。
では、記者と足立監督がどんな質疑応答を行ったのか、さっそくお読みいただこう。最初に質問したのは、司会を担当するイタリアメディアの記者だ。
イタリアメディア:足立監督のような年齢ですと悠々自適、テレビを見て毎日を過ごすような方々もいらっしゃると思います。なぜ、この映画を作るべきとお考えになったのでしょうか?
足立監督:作りたいから作りました。
イタリアメディア:製作は容易でしたか? 予算の面や様々な協力を得ることはどうだったでしょうか?
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