近藤健介「7年総額50億円」で浮き彫りになった大型契約の“問題点”
複数年の大型契約が必須の時代
そして、このオフは近藤以外にも大型契約が目立っている。三冠王を獲得した村上宗隆(ヤクルト)は22歳という若さでは、異例となる年俸6億円での3年契約を結んだ。一方、FAでオリックスに移籍した森友哉は、4年総額20億円の大型契約と言われている。
また、来シーズン中にFA権を取得する見込みの源田壮亮(西武)も5年総額15億円プラス出来高という好条件で残留を決めた。メジャーとの差はまだまだ大きいものの、実績のある選手を獲得する、もしくは引き止めるとなれば、複数年の大型契約が必須という時代になっていることは間違いないだろう。
しかしながら、過去の大型契約を見ても、期待通りの活躍ができた例は決して多くはない。近藤の引き合いとして紹介した7年契約を結んだ4人の選手について、長期契約期間の1年あたりの平均成績を最後にまとめているが、いずれの選手も高額年俸に見合う数字を残していない。
契約期間の途中で、年俸を見直すなどの条件を入れているケースももちろんあるが、彼ら以外でも長期契約期間中に好成績を残し続けたという例は稀である。球団にとっては“大きなリスク”であることは確かだ。
選手にとってのリスク
一方、長期契約は選手にとって「凶」と出るケースもある。2021年から4年契約を結んだ島内宏明(楽天)は、その後の2年間で成績を伸ばしているが、年俸固定の契約だったこともあって、今オフの契約更改では来年オフにFA権を行使したいという“異例の要望”を出して話題となっている。
この件についても、前出の関係者は日本とメジャーの差を挙げて、以下のように話してくれた。
「島内の件は、契約を考えれば、球団側には全く非はありません。4年間は成績が落ちても、年俸は下がらないわけですから……。ただ、メジャーであればもっと細かい出来高をつけて契約をしますし、契約途中でFAになれるなどを契約に含めることが多いです。日本では、そういう交渉を行う代理人がまだまだ一般的ではなく、1人の代理人が複数の選手と契約することができないといった、ルール的にも厳しいものがあります。ただ、今後大型契約が増えてくれば、当然、細かい条件が増えてきて、こうした交渉を行うプロが必要になってきます」
大型契約を結ぶことは球団にとっても大きなリスクだが、選手にとってもあらゆる面で大変な部分があることは確かだ。大型契約を結んだ選手が十分な力を発揮するためにも、今後さらに球団、選手双方がプラスになるような仕組みができていくことを望みたい。
<7年契約を結んだ選手の契約時点での通算成績一覧>
松中信彦(ソフトバンク・2006~12年・年俸5億円プラス出来高)
契約前通算成績:973試合1050安打243本塁打762打点16盗塁
打率.309 出塁率.406 長打率.588 OPS.994
則本昂大(楽天・2019~25年・年俸3億円プラス出来高)
契約前通算成績:165試合 75勝58敗 0セーブ 0ホールド 防御率3.06
柳田悠岐(ソフトバンク・2020~26年・年俸5億7000万円プラス出来高)
契約前通算成績:878試合958安打157本塁打525打点143盗塁
打率.319 出塁率.429 長打率.546 OPS.976
山田哲人(ヤクルト・2021~27年・年俸5億円プラス出来高)
契約前通算成績:1058試合1153安打214本塁打635打点176盗塁
打率.293 出塁率.400 長打率.524 OPS.924
近藤健介(ソフトバンク・2023~29年・総額50億円)
契約前通算成績:1014試合1016安打52本塁打446打点41盗塁
打率.307 出塁率.413 長打率.434 OPS.847
<7年契約を結んだ選手の契約期間の成績 ※1年平均で換算)
松中信彦(2007~12年)
108試合102安打16本塁打57打点2盗塁
打率.283 出塁率.395 長打率.469 OPS.864
則本昂大(2019~22年)
19試合8勝6敗0セーブ0ホールド 防御率3.41
柳田悠岐(2020~22年)
126試合140安打27本塁打82打点5盗塁
打率.305 出塁率.408 長打率.549 OPS.956
山田哲人(2021~22年)
134試合124安打29本塁打83打点7盗塁
打率.258 出塁率.353 長打率.486 OPS.840
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