イギリスでは3倍に! 止まらない「電気料金」高騰、岸田「抑制策」では“焼け石に水”

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“暖房か、食べ物か”の選択

 4月以降、値下げ効果が相殺されるだけでなく、その後も電気料金の上昇基調が続くことこそ、いま最も懸念されている点という。

「昨年1月時点と比べると、火力発電の燃料となるLNG(液化天然ガス)の輸入価格は3.5倍、石炭は同6~7倍にまで跳ね上がっています。この高値圏での推移は来年いっぱいは続くと見られ、岸田首相の抑制策が一時しのぎの対症療法に過ぎないのは否定できない。日本に先んじて、電気料金抑制策を取り入れた欧州の現状を見ると、来たるべき事態の深刻さが窺えます」(山本氏)

 たとえばイタリアではエネルギー価格の上昇を受け、昨年10月以降、家庭向け規制料金が改定。3か月ごとに政府が補助金を投入するも、電気料金は1年前の2~3倍に高止まりしたままという。

「ロシア産天然ガスへの依存度が高かった欧州はどこも似たような状況で、イタリアと同じく天然ガスによる発電量比率の大きいオランダでも電気料金は2.5倍に上昇。なかでもイギリスは今年10月時点の電気と都市ガス料金が1年前と比べて約3倍の水準に達しました。イギリスの場合、電気とガスがセットで売られるケースが多いため、日本とやや事情は異なりますが、標準家庭において10月以降、電気・ガス代だけで年60万円を超える見込みとなり、政府が急遽、上限価格を設定。それでも支払い額は1年前の約2倍、金額にして年42万円を超える水準で、庶民の生活を直撃しています」(山本氏)

 事態を重く見たイギリス政府は10月から来年3月まで、各家庭の料金支払い分から1世帯につき400ポンド(約6万7000円)を割引く支援策にも乗り出したが、今冬、全世帯の4割近くが“エネルギー貧困”に陥る可能性が取り沙汰されているという。

「イギリスではいま“暖房を取るか、食料を選ぶか”を指す〈heat or eat〉との言葉がメディア上で躍っています。背景にあるのが、冬季に“暖房か食料か”どちらか一方しか選択できない〈エネルギー貧困〉と呼ばれる世帯の増加です。欧州で起きている危機は決して対岸の火事でなく、日本の近未来を映す鏡かもしれないのです」(山本氏)

 防衛費の増額に5年間で43兆円もの大盤振る舞いをする一方で、電気料金抑制策に投じられる予算は約2兆円という。

デイリー新潮編集部

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