イギリスでは3倍に! 止まらない「電気料金」高騰、岸田「抑制策」では“焼け石に水”
岸田文雄首相“肝いり”の電気料金抑制策のメッキが早くも剥がれ落ちようとしている。大手電力会社の相次ぐ値上げ申請と止まらぬエネルギー価格の上昇で、効果は“帳消し”どころかマイナスへ。しかし本当に憂慮されるのは、電気代はまだまだ上がり続ける可能性が高い点だ。
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東北・北陸・中国・四国・沖縄の大手電力5社による電気料金の値上げ申請に対する審査が目下、経産省で行われている。近く東京電力も追随して値上げを申請する方向のため、影響が広範囲にわたるのは確実な情勢だ。
12月10日の会見で、岸田首相は「政府として今回の値上げ申請に対し、厳正で厳格な査定を徹底してまいります」と語ったが、当の経産省内部の雰囲気はまったく違うという。
「ロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギー価格の上昇で燃料コストが増大し、大手電力各社の経営が圧迫されているのは紛れもない事実です。電力は必要不可欠な社会インフラのため、万が一、大手電力の経営が傾けば電力の安定供給に支障が出かねず、そうなれば国民生活への影響は甚大。“決して潰すことはできない”との結論が最初にあるため、満額で認めることはないものの、申請の8割程度は認可する方向で話が進んでいると聞く」(全国紙経産省担当記者)
政府は来年1月から電力会社に対し、1kWhあたり7円を補助し、電気料金を2割程度引き下げることを決めたが、これは月400kWh使う標準家庭で「2800円前後」(同)の値下げに相当する。一方で、大手電力5社は来年4月から28~45%の値上げを認可するよう求めているため、抑制効果を上回る値上げになるのは濃厚と見られている。
「課徴金1000億円」も審査に“追い風”
エネルギー政策に詳しい常葉大学の山本隆三名誉教授が話す。
「現状、政府による値下げ支援の効果は来年1月から3月までの“期間限定”となる見込みです。今回、大手電力5社が値上げ申請したのは家庭向けの『規制料金』と呼ばれるもので、新電力への契約切り替えや自由料金プランに変更していない約52%の契約世帯が該当します。また電力大手10社は電力小売事業者から徴収している託送料金(送配電網利用料)の引き上げも予定しており、小売業者は値上げ分を価格に転嫁するため、さらに電気料金が上昇する要因となる」
1日、公正取引委員会は事業者向け電力販売でカルテルを結んだとして、中部・中国・九州電力の3社に過去最高となる計1000億円の課徴金を課したばかりだが、これが逆に申請の“追い風”になっているとも。
「2016年、電気の小売業への参入が全面自由化された『電力自由化』には大手電力同士の競争を促し、電気料金の抑制へとつなげる狙いがありました。“営業エリアの棲み分け”を大手同士で申し合わせた今回のカルテル事件はこれを完全に骨抜きにするもので、巨額の課徴金も当然との声は強い。しかし結果的に“自分たちが働いた不正への罰で経営不安が増大し、ますます値上げ申請を認めざるを得ない”という皮肉な状況を生み出している」(前出・記者)
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