柔道GSで阿部一二三の“宿命のライバル”丸山城志郎が優勝 だが試合内容について本人は

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 3年ぶりの国内開催となった柔道グランドスラムの東京大会は、2日目(12月4日)に男子66キロ級が行われ、丸山城志郎(ミキハウス=28)が優勝した。東京五輪の金メダリストでライバルである阿部一二三(パーク24=25)がスタンドから見守る中での試合であった。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

ライバル阿部に涙をのんだ丸山が優勝

 丸山は宮崎県宮崎市出身。父の丸山顕志さんもバルセロナ五輪に出場(65キロ級で7位)した名選手だ。丸山は桐蔭学園高校(神奈川県)から五輪3連覇の野村忠宏さんやシドニー五輪銀メダルの篠原信一さんらを輩出した名門、天理大学(奈良県)に進学し、卒業した現在も練習拠点としている。

 阿部とは互角の対戦成績を残し、東京五輪の代表争いが注目された。プレーオフの大激戦にまでもつれたが、24分の死闘の末、丸山は阿部の大内刈りに屈し、涙をのんだ。

 今年10月の世界選手権(タシケント)では、決勝で阿部と対戦。組み際にかけた大内刈りを返されてポイントを奪われ、再び敗れた。「柔道をやめてしまえばどんなに楽か」とも思いながら、自らを叱咤して続けているという丸山。今回は、最強のライバル不在にも「出ないという選択肢はない」として登場した。

 世界の柔道関係者が研究しているが、誰にもまねのできないカミソリのような切れ味の内股に加え、阿部を下したこともある捨て身技の巴投げも強烈だ。袖釣り込み腰など担ぎ技も健在。

 だが、雪辱を期した世界選手権で阿部に敗れたショックはやはり大きく、「この大会に向けてつくり上げていくのが、本当に難しかった」と話していた。それが影響したのか、田中龍馬(筑波大=20)との準々決勝では、投げられて技ありを取られたかに見えた。ところが、相手が頭から畳に突っ込む危険行為で反則負けとなり、助かった。

 柔道は相手が危険になるだけではなく、技をかけた選手の身体が危険になると判断されると反則負けになる。内股をかけながら無理に畳に突っ込むと、2人分の体重が自分の首にかかり、頸椎損傷など取り返しのつかない事故につながるからだ。

優勝するも反省の弁

 丸山は準決勝でヨンドンペレンレイ(モンゴル)相手にも苦戦を強いられた。決勝の相手は、昨年のインターハイのチャンピオンでまだ18歳の服部辰成(東海大相模高校)だった。服部は阿部が欠場したため、急遽出場していた。開始早々、寝技に落ち込もうとするなど服部は威勢よく攻めてきたが、落ち着いていた丸山が試合開始51秒に巴投げを打つと、背中から畳に落ちて一本。あっという間だった。

 丸山は久しぶりに笑顔を見せて、ファンにサインをしながら会見室に現れた。だが、鮮やかな一本勝ちにもかかわらず、開口一番に発したのは「ひどい内容で零点に近いですよ」だった。

「毎日腐らずに稽古はしてきた。その貯まっていた貯金で、調子が悪くても勝てたのかな。(中略)中途半端な気持ちでずっと練習をして試合に挑んでしまった。やっぱり試合はそんなに甘くない」など反省の弁。それでも「一回りも二回りも成長した姿を見せられるように毎日頑張りたい。やるしかない、そのひと言しかない。どんな状況に置かれてもやるしかない」とパリ五輪を見据えた。

 メディアへの応対が終わった後も、丸山が去らないで椅子に座っているからどうしたのかと思ったら、続いて海外メディアの取材が待っていた。物静かな求道者、野武士のような印象を持たせる丸山は、切れ味抜群の日本刀のような技とも相まって、海外でも人気が高い。

 丸山の「復活の狼煙」を、この日、スタンドで見守った阿部はどう見ていたのか。2人の「ライバル物語」はまだ続く。

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