小池都知事の「多摩格差ゼロ」はどうなった? 臨海地下鉄発表で“後回し”への不安

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「多摩都市レールを後回しにしない」と担当者

「臨海地下鉄は2040年代までに開業を目指す方向で計画を進めていますが、だからと言って多摩都市モノレールの整備を後回しにするという話ではありません」と断言するのは、東京都都市整備局都市基盤部交通企画課の担当者だ。

 同課は多摩都市モノレールの整備を担当する部署でもある。多摩都市モノレールは多摩ニュータウンを南北につなぐ鉄道網として1970年代から計画が浮上。1998年に部分開業した。2000年に立川北駅―多摩センター駅間が開業している。以降は大きな動きはなかったが、その間も沿線自治体は盛んに延伸を訴えてきた。

 そして今年10月に、ようやく北端の上北台駅から箱根ケ崎駅までの延伸が明確に示された。発表時、開業時期は未定とされたが、小池都知事は12月8日の都議会で2030年代半ばまでに開業させると断言した。

 多摩都市モノレールの延伸は、これまで東京都内の市で唯一鉄道駅がない市という不名誉な称号で形容されてきた武蔵村山市の悲願だった。そのため、武蔵村山市は2005年頃にはモノレールを延伸するための計画を練り始め、導入空間の整備にも着手している。10年以上前から動いてきた武蔵村山市の苦労が、ようやく報われた形だ。

 他方で、同じような苦労をしながらも、いまだ報われない自治体もある。それが、東京都町田市だ。

町田市の涙ぐましい努力

 多摩都市モノレールには南端の多摩センター駅からの延伸計画もあり、こちらも沿線自治体は積極的に事業を推進してきた。特に町田市はモノレールを早期に実現するため、延伸加速化プロジェクトと銘打って、駅用地を事前に購入している。モノレールの建設が始まれば、それを東京都へ提供するという算段だった。

「事業認可を受けるのは東京都ですので、町田市がモノレールの計画そのものをどうこうできる話ではありませんが……」と前置きしながらも、東京都町田市都市づくり部都市政策課多摩都市モノレール推進室の担当者はこう話す。

「延伸加速化プロジェクトとして、2019年度にモノレールの駅開設予定地である約1000平方メートルの土地を先行取得しています」と説明する。

 まだ事業認可もされていないモノレール計画だから、採算性や需要予測に狂いが生じる可能性はある。最悪の場合、建設が凍結されることだって考えられるだろう。その場合、町田市が先行取得した土地は無駄になってしまうかもしれない。

 それにも関わらず、町田市は駅開設予定地を先行取得した。その理由は、土地所有者が相続などを理由に民間企業に売却してしまうという事態を避けることにある。

 民間企業が駅予定地を購入してオフィスビルもしくはマンションなどを建設してしまえば、用地の取得交渉やビルの解体・駅の建設に時間がかかってしまう。そうなると、せっかく事業認可を受けてもモノレールの開業時期が遅れてしまう。

 そうした事態を避けるためにも、町田市は先行取得という手法を選択した。それほど、多摩都市モノレールに期待を寄せているのだ。

 町田市を筆頭に涙ぐましい努力をしている沿線自治体だが、東京都は多摩都市モノレール延伸に対して事業化を決定していない。

「多摩都市モノレールの町田市方面への延伸は、今年に入ってB案に決定しています。その際、沿線自治体には深度化を図るように通達しています」(東京都都市整備局都市基盤部交通企画課の担当者)

 担当者が口にした深度化とは、要するに「鉄道を開業したら需要が確保できるように沿線自治体が先行してまちづくりに取り組み、多摩都市モノレールが赤字にならないように努力してほしい」という意味だ。つまり、黒字化のメドが立たなければ、多摩都市モノレールは先に進まない。

 前述したように、東京23区に比べて多摩の発展が遅れている主因はインフラ整備が遅れている点にある。鉄道や道路が整備されたら、企業は自然に集まってくる。同時に居住人口も増えるだろう。企業と居住人口が増えれば、さらにインフラ整備が進み、民間投資を呼び込みやすくなる。

 こうした好循環を生むために、沿線自治体は多摩都市モノレールの延伸を訴えている。それにも関わらず、東京都は「需要を生むために深度化を図れ」と沿線自治体に指示する。これでは「タマゴが先か、鶏が先か」の議論になり、平行線をたどることになるだろう。いたずらに時間が経過し、いつまで経ってもモノレールは事業認可にたどりつかない。人口減少により、計画自体が消滅しかねない。

 小池都知事の2期目の任期は、残すところ2年を切った。公約に掲げた多摩格差の解消は、初手のインフラ整備の段階からいっこうに見えてこない。

小川裕夫/フリーランスライター

デイリー新潮編集部

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