日本発の「おいしさ」を世界に届ける――高宮 満(キユーピー代表取締役社長執行役員)【佐藤優の頂上対決】
お酢が味を決める
高宮 一方、味を決めるのはお酢です。マヨネーズは西洋生まれですから西洋のお酢を使いますが、同時に日本の食に合わせるので、和のお酢も使いたい。それで自社で会社を作り、お酢を醸造しています。
佐藤 決め手になるものは、他社に依存しないということですね。油はどうですか。
高宮 これは非常に使用量が多いので、日本の農業事情からして国内だけで賄うことはできません。菜種油や大豆油などをアメリカやブラジル、カナダ、オーストラリアといった国々から輸入しています。
佐藤 すると世界情勢が強く影響してきますね。今回のウクライナ戦争でも油の価格が大きく変わったのではないですか。
高宮 ええ、ウクライナは菜種油やトウモロコシ油の産地です。ただその市場は主にヨーロッパなので、直接的には日本に影響はありません。
佐藤 ただ、市場の影響は受ける。
高宮 その通りで、全体の需給バランスがありますから、価格は上がります。また地球温暖化が進んで各地で収穫が不安定になっていることにも左右されます。
佐藤 そうなると、食品会社はどこもそうですが、価格に転嫁しないわけにはいかなくなる。
高宮 弊社も昨年、今年と値上げのお願いをすることになりました。それに際して、社内で三つ方針を示しました。まず一つは、自分たちでできる限りの努力をすること。具体的には生産やスタッフ業務の効率化ですね。それを徹底した上で原料の価格上昇を吸収できなければ、その時初めて値上げをお願いさせていただく。これが二つ目です。ただしその際には、いま起きていることを丁寧に説明しなくてはなりません。そして三つ目は、商品の価値を磨く。つまり値段を上げてもお客さまに評価していただけるものにするということです。
佐藤 三つ目は、この危機をチャンスにすることでもありますね。
高宮 その通りです。状況としてはかつてないピンチにあります。最近は円安で、さらに値上げの要因が増えている。
佐藤 コロナにウクライナ戦争の組み合わせだけでも、100年に1度くらいの大きな混乱ですからね。
高宮 けれども、こうした状況の中だからこそわかった自分たちの強みや弱点があります。川の水位が高かった時には見えなかった底が、水位が下がって見えることがありますね。いまがその時で、これまでのビジネスモデルが通用しなくなっているなか、会社の体質を変えていく好機だととらえています。
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